国立保健医療科学院で実施している保健所長等の養成訓練の概要

  • 牛山 明
    国立保健医療科学院生活環境研究部

書誌事項

タイトル別名
  • Overview of the Training Course for the Development of Public Health Center Directors implemented by the National Institute of Public Health

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抄録

<p>国立保健医療科学院で実施している研修の代表的なものの一つに専門課程Ⅰ地域保健福祉行政管理分野がある.このコースは,公衆衛生,保健福祉医療分野におけるリーダーとなるために必要な高度の能力を養うことを目的とするものであり,あわせて,保健所長の資格要件を定めた地域保健法施行令第 4 条第 1 項第 2 号の「国立保健医療科学院の行う養成訓練の課程」及び第 2 項第 3 号の「養成訓練課程」に相当し,本課程を修了した医師または医師以外の地方公共団体職員は,保健所長となる要件を満たすものである.すなわち,保健所長への就任を予定しているが,行政医師としての経験が浅いものや,修了後直ちに保健所長にならない場合でも将来的に所長なる予定がある方を対象としている.</p><p>本課程の履修については,現在 2 通りのコースが設置されている.一つは「本科」と呼ばれる修業期間が 1 年のコースであり,もう一つは「分割前期」という約 3 ヶ月間(13週間)のコースである.3ヶ月間のコースを修了後,希望により「分割後期」に進むことが可能であり,その後の 3 年間を保健所で勤務をしながら学びを続けるものである.本科のうち最初の 3 ヶ月は分割前期と同じプログラムであり,「本科」と「分割前期+分割後期」の履修は同等である.</p><p>本科と分割前期は通常 4 月上旬に開講し,7月上旬に閉講する約13週間のコースである.分割前期を受講するまで病院で臨床医師として診療をしていた医師であっても,スムーズに学習ができるように公衆衛生の基礎的事項から学ぶことが可能な科目も配置している.また科目によっては,座学だけでなく,演習が主体となる科目もある,多くの科目で,グループワークを中心とするアクティブラーニングを取り入れており,研修生の主体的な学びを目指している.これらの研修を通じて,保健所長として必要となる公衆衛生に関連する実践的な内容を学び,修了後に保健所長あるいはリーダーとしての実務に対応できる能力を養うことができる.本科および分割後期では,これらの講義や演習に加え,「特別研究」として地域の公衆衛生学的問題に研究的アプローチで解決に取り組むことも行っている.</p><p>これまではすべての研修を対面式で行ってきたが,新型コロナウイルス蔓延に伴う状況により研修を対面で行うことが困難となり,令和 2 年度は全面的にオンラインで,また令和 3 年度は集合とオンラインの混合により行った.このように過去 3 年間の開催形態が,集合形式,オンライン形式,混合形式と異なるものとなったが,オンライン研修を組み込むことの利点も多く見られ,今後の研修の運営にとって大きな変革点となっている.本課程の修了生が全国各地の保健所で公衆衛生のリーダーとして活躍できるよう,研修内容についても引き続き洗練をしていく必要がある.</p>

収録刊行物

  • 保健医療科学

    保健医療科学 71 (1), 2-6, 2022-02-28

    国立保健医療科学院

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