我が国における低出生体重児増加(1980~2015年)におよぼす早期正期産増加の影響

  • 吉田 穂波
    神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科
  • 加藤 則子
    十文字学園女子大学教育人文学部幼児教育学科
  • 横山 徹爾
    国立保健医療科学院生涯健康研究部

書誌事項

タイトル別名
  • Early full-term birth is an important factor for the increase in the proportion of low-birth-weight infants between 1980 and 2015 in Japan

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抄録

<p>目的:日本では,低出生体重(LBW:2,500g未満)児の出生割合が増加している.近年の研究では,胎児の子宮内発育と,成育後の肥満,糖尿病,心血管疾患などの慢性疾患のリスク増加との関連が示唆されており,LBW児の増加はこの点からも危惧される.我が国におけるLBW児の増加の要因やLBW児の生育後の健康状態への影響を明らかにする全国規模の分析が必要である.今回,1980年から2015年までの出生児の人口動態統計という全数調査データを用いて,LBW児の増加の要因を解析した.</p><p>方法:人口動態統計特別集計データの1980年から2015年におけるLBW児割合の変遷を 5 年おきに分析した(n=9,743,319).統計解析にはSAS ver 9.4(Windows版)を用いた.</p><p>結果:1980年から2015年まで35年間の人口動態調査の全数把握データを用い,妊娠週数,母体年齢,性別,出生順位,胎児数などの要因で調整した人口寄与危険割合(Population attributable risk proportion:PARP)を分析したところ,妊娠37週における変化が最も大きく11%から22%へと 2 倍に増加した.これにより,妊娠37週での出生は他の要因よりもLBW児増加と強い相関のあることが示された.</p><p>結論:やせや母親の勤務環境などLBW児増加に影響を与える要因は数多くあるが,陣痛誘発や帝王切開などの医療的介入によって妊娠期間が早まるものの正期産の週数以内でとどまっており,早期正期産の増加が集団全体としてLBW児の増加に最も寄与することが示唆された.今後は,妊婦の分娩方法や妊娠経過に関する情報も含めた大規模調査によりLBW児の増加要因ならびに児の予後を追跡していく必要があると考えられた.</p>

収録刊行物

  • 保健医療科学

    保健医療科学 71 (1), 77-86, 2022-02-28

    国立保健医療科学院

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