「自然」を護る,「大山さん」を助ける : 伯耆大山におけるナラ枯れの本質をめぐる対話

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  • Preserving Nature, Caring for Daisen-san: Dialogue About the Essence of Japanese Oak Wilt in Mt. Daisen
  • 「 シゼン 」 オ マモル,「 オオヤマ サン 」 オ タスケル : ホウキ オオヤマ ニ オケル ナラ カレ ノ ホンシツ オ メグル タイワ

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抄録

本稿は,伯耆大山(以下,大山)で発生した樹木の病気の一種である「ナラ枯れ」をめぐって展開されている論争に焦点を当てている。鳥取県議会において,ナラ枯れ対策としてミズナラを伐採し萌芽更新することが,国立公園内における「自然保護」の論理に沿っているか否かという点が問われた。本研究では大山山麓地域において,「ナラ枯れ」への対策として萌芽更新を行うことをどのように考えるかという点を中心に言説を調査した。萌芽更新を行うボランティア団体を含む山麓地域において活動する人々に対して,参与観察及びインタビューを行った。調査の結果,萌芽更新の是非をめぐる問題は,ナラ枯れという事象が自然現象かそれとも社会的な問題であるのか,自然に“人間”が含まれるのか否か,そして“人間”が自然の摂理へ介入してよいのか等,複数の問題と連動する,「ナラ枯れ」現象の本質をめぐる論争でもあることが明らかになった。県議会等における議論及び調査した言説において,人間以外の動植物の視点,複数の異なる研究者の知見,そしてフィクション作品における概念等が,「ナラ枯れ」という事象の本質について語るアクターとして登場した。その中でも,県議会や萌芽更新を行う団体内において言及された「大山さん」についての調査から,かつては“大山”の景観が天候の重要な指標であり生活の調整を司っていたこと,そして「大山さん」が暮らしを護ってくれているという感覚があることが示唆された。

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