色と装いを楽しむ

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抄録

衣服は、私たちが生命を維持し、健康を保つために重要であるばかりではなく、心身の安心・安全に密接に関わり、生活に活力や楽しさを生み出す力を持っている。第39回日本重症心身障害学会学術集会の重症心身障害児(者)では、色の持つ力と装いに着目し、機能性はもちろんのこと、美しさと装う楽しさを併せ持つ衣服を提案する。 ファッションショーは、国際医療福祉リハビリテーションセンターなす療育園と、のざわ特別支援学校高等部、および手織り工房のろぼっけ(栃木県下都賀郡壬生町)の協力を得て実施する。重症児モデルは、家族の承諾を得た8歳と15歳の女性2名と16歳の男性1名からなる計3名であり、さらに、手織り工房のろぼっけ所属の障害を持つ織り作家も自らの作品を着装して参加する。 のろぼっけの織り作家が造り出す作品の色は、織糸に複数の色を使用しているにもかかわらず、透明感がある。その織物を身にまとって装うとき、着用者が異なると、同じ素材でも別の雰囲気を呈する色となることも興味深い。複雑な織物の色と着用者の皮膚の色との関係から、装うことにより新たな色が表出してくることも面白い。今年度は、脳性麻痺のモデルがショーで使用する帽子やハンドバッグ等の小物に、その織物を使用する。 重症児モデルの衣服の製作には、本人や家族および介護者との面談による身体状況や日常生活状況のヒアリング、またはアンケートによる調査を行い、衣服の好みや要望等を把握し、その情報を反映した衣服を作製し、衣服の機能と美しさが両立し、着用中も快適さが持続する衣服を提案する。女性モデル用の衣服は、特別な配色デザインをした特殊な織技術を利用した機能性素材を用い、身体を美しく覆うロング丈のワンピースと清楚なボレロからなるアンサンブルスタイルである。衣服は、身体を圧迫せず、着用による疲労感がなく、着心地の良さが持続し、着脱もしやすく、軽量で、洗濯等の取り扱いも容易である。着用者が一番美しく映える色やデザインを選定し、シルエットにも配慮を行っている。男性モデル用の衣服は、いろいろな生活シーンに活用できるように、カジュアルにもフォーマルにも着用できるシャツ・ベスト・ズボンから構成するスタイルとした。無理なく着脱でき、着用中も着心地が持続する工夫を行い、着用者の身体状況に応じた工夫を行っている。これらの衣服は、車椅子使用時に身体を固定するための車椅子のベルトが目立たなくする工夫も行っている*)。 今年度は、色を装うことにより生活が楽しくなる体験を行い、機能性と美しさを持つ着心地の良い衣服の提案を行う。 参考) *)多屋淑子.重症心身障害児(者)の生活を快適にする衣服.(社)全国重症心身障害児(者)を守る会.両親の集い 667 1月号:12−6.2013. 略歴 1977年 お茶の水女子大学大学院家政学研究科修了 博士(生活工学) 日本大学専任講師、田中千代学園短期大学助教授を経て、1996年より日本女子大学教授 日本繊維機械学会学会賞受賞(1996年) 現在、日本重症心身障害学会評議員、日本学術会議連携会員、経済産業省独立行政法人評価委員会委員等

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390573407595777152
  • DOI
    10.24635/jsmid.38.2_247
  • ISSN
    24337307
    13431439
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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