社会制度と移民の宗教的価値観との衝突に関する一考察

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タイトル別名
  • A study on the clashes between social institutions and religious values of immigrants

抄録

<p> 第二次世界大戦後,外国人労働者を多数受け入れた欧州では,移民関連の問題が次第に深刻化していった.そのような問題のなかに,移民の宗教的価値観と受入国の社会制度との間で生じる文化摩擦がある.この文化摩擦の深刻度やその現象形態は国によって異なる.本稿の目的は,西洋先進国において移民と受入国社会の制度との間で宗教が関連する文化摩擦の現象形態や深刻度が異なる要因について探ることであった.まず,先行研究を検討し,移民の所属階層の差異や,移民の宗教が受入国の主流派宗教とどの程度異なるか,移民の宗教儀礼が公共空間の振る舞いに関わるか否かといったことが,重要な要因であることを確認した.さらに,西洋先進国におけるムスリム女性のヴェール論争を事例に,先行研究を資料とした国家比較から,ある程度一般化可能な構図を導出した.その構図によれば,この問題に関して,移民側の要因としては宗教が,受入国側の要因としては経路依存的に作られた制度,アイデンティティ,多数派宗教が重要な役割を演じる.これらの要因の相互作用のなかで,政治化された文化摩擦の現象形態や深刻度が国によって異なる様相を帯びる.最後に,この構図の有効性の一端を示す目的で,ムスリムとの文化摩擦をいかに解決すべきかを論じたドイツの学者の思想を,構図を用いて分析した.</p>

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