チアダンスの競技特異的ジャンプパフォーマンス改善のためのトレーニング

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抄録

【目的】チアダンス競技におけるジャンプ動作は、競技の優劣に影響を及ぼす動作である と考えられる。しかし、チアダンス競技ではジャンプパフォーマンスに関する採点基準が 設定されていないため、どのようなジャンプが優れているのかについては明確ではない。 本研究は、チアダンス競技のジャンプパフォーマンスの優劣に関する客観的な指標を明ら かにし、ジャンプパフォーマンス向上に必要な知見を得ることを目的とした。 【方法】S チアダンスクラブに所属するチアダンス経験を有する女性チアダンス選手19 名 (年齢:13.6±1.5 歳、身長:153.0±5.9cm、体重45.0±7.1kg、競技歴:8.2±2.9 年)を 対象とした。被験者の中には、世界大会2 位の実績を持つ10 名が含まれている。測定項目 は、体格(身長、体重、体脂肪率、下肢長)、跳躍能力(リバウンドジャンプ、T ジャンプ)、 競技特異的ジャンプ能力(スプリットジャンプ:SJ、トウタッチジャンプ:TTJ、スイッチ リープ:SL であった。また、3 名のチアダンス指導者に、競技パフォーマンス、およびジ ャンプパフォーマンスの主観的な順位を依頼し、主観的順位の中央値で上位群と下位群の2 群に振り分けて各測定項目の差を比較した。上位群と下位群の各測定項目の比較には、対 応のないt 検定を行った。競技パフォーマンスの主観的順位の差の比較は、Mann-Whitney のU 検定を行った。また、各測定項目の群間の差の大きさを示すために効果量(Hedges'g) を算出した。競技パフォーマンスの主観的順位とジャンプパフォーマンスの主観的順位、 およびジャンプパフォーマンスの主観的順位と各測定項目との関連性は、Spearman の順位 相関係数で検討した。有意水準は5%未満とした。 【結果】ジャンプパフォーマンスの主観的順位上位群と下位群との比較において、SL 開脚 角度、および開脚角速度に有意差が認められ、上位群が高値を示した(p < 0.05)。また、 RJ 接地時間、TTJ 開脚角度、および開脚角速度では、有意差は認められなかったが、いず れも上位群で高値を示し、効果量が大きかった(それぞれES=0.74、0.76、0.73)。 【考察】SL やTTJ において開脚角度と開脚角速度が上位群は下位群よりも高値を示したこ とは、最大跳躍後の最大開脚に近い状態を長く維持するために不可欠な要因であると考え られる。また、最大跳躍後に最大開脚をできるだけ長く維持するために、脚の最大開脚角 度だけではなく、最大開脚に到達する時間をできるだけ短くすることが必要である。その ためSL やTTJ の角速度を高める必要があり、最大開脚角度とそれに到達するまでの角速度 の高さが、滞空時間が長く感じられる美しいジャンプに関与する要因であると考えられる。 【現場への提言】チアダンス競技における競技特異的ジャンプパフォーマンスの優劣には、 TTJ とSL の最大開脚角度、および開脚角速度、RJ 接地時間が関与していると考えられる。 チアダンス競技のパフォーマンスに関与するジャンプ能力を高めるためには、ジャンプ時 の最大開脚角度の増大と開脚角速度を高めるトレーニングが必要である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390573407661274496
  • DOI
    10.32171/cpjssct.2020.0_o05
  • ISSN
    24343323
    24337773
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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