ベトナム人中上級日本語学習者の漢字習得における漢越語利用 : 介護福祉士国家試験対策の考案に向けた基礎研究

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タイトル別名
  • The Use of Sino-Vietnamese Words in the Acquisition of Kanji by Vietnamese Intermediate and Advanced Japanese Language Learners
  • ベトナムジン チュウジョウ キュウ ニホンゴ ガクシュウシャ ノ カンジ シュウトク ニ オケル カンエツゴ リヨウ カイゴフクシシ コッカシケン タイサク ノ コウアン ニ ムケタ キソ ケンキュウ
  • ベトナム ニンチュウ ジョウキュウ ニホンゴ ガクシュウシャ ノ カンジ シュウトク ニ オケル カンエツゴ リヨウ : カイゴ フクシシ コッカ シケン タイサク ノ コウアン ニ ムケタ キソ ケンキュウ

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本稿は、ベトナム人中上級日本語学習者を対象としたインタビュー調査から得られたデータに基づき、漢字習得における漢越語(ベトナム語の約7 割を占めるとされる中国語由来の漢字語彙)の利用について記述、分析したものである。本稿は、漢越語を利用した介護福祉士国家試験対策を今後考案していくための基礎研究に位置づけられる。本研究では、大学・大学院で日本語を学習している留学生7 名及び介護福祉士看護師国家試験合格者4 名(以下、介護看護既卒者)にインタビューを行い、どのように漢越語知識を生かしてきたか/生かしてこなかったか、その背景に何があると考えられるかについて明らかにしようと試みた。インタビューはベトナム語で行い、質的分析の結果について執筆者全員で検討を重ね、最終的に執筆者全員でデータ解釈の合意を得た。留学生7 名は、人によって程度の差はあるものの、漢越語知識を漢字や語彙の記憶、読み方や意味の推測に利用していた。一方、介護看護既卒者の場合、2 名は漢越語を利用し、残り2 名はほぼ全く利用していなかった。後者2 名が国家試験に合格できた背景には、1名は参加プログラムの特殊性に起因すること、もう1 名はクラスメイトの中で「意欲がとても高い」(留学生担当教員)という特殊性に起因していた。また、初めに受けた指導方法がその後の漢越語の利用如何に影響することが示唆された。以上から、第一に、ベトナム人介護人材にとって漢越語知識は国家試験対策として有効な「潜在能力」であるため、介護福祉士国家試験を目指すことになったベトナム人介護人材は、なるべく早期に漢越語を用いた漢字学習を導入することが望ましいという視点が得られた。第二に、本研究では、ベトナム語における全ての漢越語が利用可能であるというわけではないことも示唆された。日常生活でよく使用される漢越語であればすでにベトナム語の意味と結合されているため、その漢越語からの漢字語彙の意味推測への利用が可能となるが、あまり日常的に接することのない漢越語だと、ベトナム語の意味がそれだけでは分からないため、即利用可能とはならないようである。そのため、そのような漢越語の場合はまず純粋ベトナム語の意味と結び付ける作業が必要となると考えられる。これら本稿で得られた知見は、漢越語を利用した介護福祉士国家試験対策を今後考案していくための重要な礎となるものである。

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