地域の地質資源としての視点から見る玄武洞溶岩

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  • Genbu-do Lava, Toyooka City, Hyogo Prefecture: From view of regional geological resources

抄録

<p>日本地質学会は2016年に「県の石」を発表した.選定の趣旨は,一般市民の方々に大地の性質や成り立ちに関心を持っていただくこと,「ジオパーク」への貢献ほかが挙げられている(http://www.geosociety.jp/name/content0121.html). 例えば兵庫県の石の一つはアルカリ玄武岩であり,選定理由の説明では,玄武洞は美しい柱状節理と「玄武岩」という岩石名の由来となったこと,国の天然記念物であること,松山基範が地球磁場の逆転を唱えるきっかけとなった場所として国際的にも知られていること,玄武洞はもともと採石場であり,市内各地の伝統的な石積みや漬物石に使用されていること,が述べられている(http://www.geosociety.jp/name/content0147.html).採石によりもたらされた特徴的な景観であることは江戸時代より知られ観光地となっていたが,地球科学史的に重要な岩石であることは,山陰海岸ジオパークになってから一層強調されていると思われる.他方,近代において地域の人々にとって重要な岩石資源であったことは,北但大震災で被災した豊岡市の復興資材として活用されたことが指摘されるものの,近世における石材の活用状況は,ほとんど具体的には明らかにされていない. </p><p> ところで,岩石資源の価値を評価するあり方の一つに“Global Heritage Stone Resource”(以下,GHSR)がある.IUGSの小委員会のウェブサイトによると,天然石は低エネルギーで利用可能で,加工品は無毒であり,最も耐久性のある建築資材であることから,持続可能な鉱物質の資源の最たるものである.GHSRは,芸術・建築作品,伝統的建造物などにおける,天然石の卓越性を強調することを狙っている(http://globalheritagestone.com/overview/). このような天然石に対する認識の強化は,地質学者や建築家,関係する産業従事者を主としており,一般市民には言及されていない.歴史的に用いられた岩石資源について,地域社会との関わりを歴史的に明らかにするとともに,地域産業の資源,あるいは建造物,石製品における利用例を具体的に示すことで,一般市民に対して身近な地質資源への関心を高めうる可能性があると演者は考える.</p><p> 人と地質資源の関わりから見たとき,玄武洞の玄武岩(玄武洞溶岩)は,採石が行われていた近世以来の地域社会にとっての価値を解明する余地があると考える.例えば,大正時代には豊岡市南部の豪農の屋敷改築の際に玄武洞溶岩が用いられた記録があり,このような記録を蓄積して,水害常襲地帯における農家の敷地の防災に近代以前に玄武岩が広く貢献したことを明らかにすることなどが考えられる.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390573715168634368
  • DOI
    10.14863/geosocabst.2021.0_088
  • ISSN
    21876665
    13483935
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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