3.胆汁うっ滞型薬物性肝障害の予測に向けた<i>in vitro</i>評価系の構築

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抄録

医薬品の開発において、その成功確率が年々低くなっている。その原因として第1位は薬効の不十分であるが、その次として安全性(毒性)が挙げられている1)。つまり、臨床における安全性(副作用)を早期の段階にて適切に予測することが新薬開発の成功に向けて非常に重要である。<br>  医薬品による毒性は主に中毒性の毒性及び特異体質性の毒性(idiosyncratic drug toxicity: IDT)に分けられる2)。前者は各薬物の薬理作用に起因し、投与量依存的にその毒性がみられることが多い。そのため投与量を減量することでその発症を回避することが可能であるため、臨床上問題となることは少ない。<br>  一方でIDTは薬理作用との関係性や用量依存性はないことから、それを予測することは非常に困難である。そのため非臨床試験~臨床試験において様々な安全性試験を経たにもかかわらず、上市された後に発症し、また稀に死に至ることもある。さらに、これが原因で医薬品の市場撤退につながると多大な損害を被るため、製薬企業にとって回避すべき事案である。またIDT発症は非常に割合が低く、約5,000~10,000人に1人の割合で発症すると言われている。その原因として、薬物そのものの毒性発現ポテンシャルだけでなく、患者の薬物代謝酵素・トランスポーターなどの遺伝的背景、疾患及び食事・飲酒・喫煙などといった生活習慣の要因すべてが重なった際に発症することが挙げられる。そのため、遺伝的背景が同じである動物を用いた非臨床試験や、除外基準をクリアした安全性の高い患者集団(~1,000人規模)における臨床試験ではみられず、上市後に数万人以上の患者に使用され初めてみられる。これらを解決するためには医薬品による毒性発症メカニズムを詳細に解明し、それに基づいた適切なin vitro評価系を構築することが重要と考えられる。一方で、薬物により引き起こされる毒性は様々に存在する。その中でも医薬品開発の中止・市場撤退という観点から調べた報告では、心毒性・肝毒性が主たる原因であることが明らかとなっている3)。つまり、このような毒性を早期にかつ適切に検出することが新薬開発を成功につなげるために急務であり、その中でも本総説では薬物性肝障害(drug-induced liver injury: DILI)に着目し、DILIの発症メカニズムから我々の研究成果を含めて概説する。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390573792574660736
  • DOI
    10.50971/tanigaku.2020.22_26
  • ISSN
    24365114
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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