8.トログリタゾンから学んだ肝毒性:<i>in vivo</i>から<i>in vitro</i>へ

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Abstract

トログリタゾンは核内受容体であるPPARγに対してアゴニスト活性をもつチアゾリジン系抗糖尿病薬として、1997年より販売が開始された。しかしながら、その後まれではあるが重篤な肝毒性が散見され、2000年に本製品の販売中止が判断された。正常な実験動物を用いた非臨床安全性試験では肝毒性を示唆する結果は得られていないこと、また臨床での肝毒性発症頻度が非常に低いことなどから、トログリタゾンによる肝毒性は特異体質に起因すると考えられている1)。特異体質性肝毒性は、その発症メカニズムが明確ではなく、また先にも述べたように正常な実験動物を用いた非臨床安全性試験での検出は非常に困難であることから、前臨床段階でそのリスクを把握することは難しい。しかしながら、製薬企業の毒性研究者には、前臨床段階で特異体質性肝毒性リスクを評価し、より安全な薬を早く患者に届ける責務がある。本項では、トログリタゾンによる肝毒性発症に関わる因子としての可能性が報告されている「反応性代謝物生成リスク」と「ミトコンドリア毒性」を検出する評価系構築とその応用について論じていきたい。トログリタゾンに限らず、特異体質性肝毒性を引き起こす薬物の多くが「反応性代謝物生成リスク」もしくは「ミトコンドリア毒性」を有している。これらが特異体質性肝毒性を引き起こしている直接的な証拠はいまだ得られていないが、これらを回避することは特異体質性肝毒性のリスクを軽減すると考えられている。

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