スウェーデンにおけるインクルーシブ教育と知的障害特別高校の意義・役割 : ストックホルムの聖エリク特別高校の訪問調査から

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  • スウェーデン ニ オケル インクルーシブ キョウイク ト チテキ ショウガイ トクベツ コウコウ ノ イギ ・ ヤクワリ : ストックホルム ノ セイエリク トクベツ コウコウ ノ ホウモン チョウサ カラ

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抄録

type:P

type:研究ノート

type:Notes

「北欧福祉国家と子ども・若者の特別ケア」研究チーム(代表:髙橋智日本大学文理学部教育学科教授・東京学芸大学名誉教授)は、1994年から四半世紀以上にわたり北欧福祉国家(スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、アイスランド)を調査訪問(全23回)して、多様な発達困難を有する子ども・若者の発達支援・特別ケアのあり方について日本との比較研究を行ってきた。本稿ではその一環として、2020年3月に実施したスウェーデン・ストックホルム市内にある公立高校に併置された聖エリク特別高校の訪問調査を通して、スウェーデンにおけるインクルーシブ教育のもとでの知的障害特別高校の取り組みとその意義について検討した。スウェーデンの知的障害特別高校の教育は大人の生活への準備期間として位置づいており、知的障害がある子どもにとって進路選択は容易ではないため、知的障害特別高校は通常高校よりも1年長い4年間の修学年限が保障されている。聖エリク特別高校では、他の特別学校のように落ち着いた環境のなかで生徒の状態や学習ニーズに応じたプログラムが実施されていた。また通常の高校と併置されていることで相互交流や理解を通して成長・発達の機会が提供され、インクルーシブ社会に繋がる教育が行われていた。しかし、特別高校では就労をめざした教育プログラムが実施されているものの、それが卒業後の進路・就労に繋がっていない現状が大きな課題である。またMineur(2015)が指摘するように、特別高校に通う知的障害生徒は自分たちが受けている教育を主流の教育システムよりも価値が低いものと認識し、この問題は特別高校の教育が高等教育進学に必要な資格を提供しないということにも関連している。これは特別学校に係る排除の問題の例示でもあり、特別高校がスウェーデンのインクルーシブ教育や「A School for All」のビジョンと一致していないことを示唆している。それゆえに特別高校が、知的障害を有する高校生の学びの場として最適な場となり得ているのかどうかについて検証が不可欠である。

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