台風Faxai(2019)の発生に対する大規模環境場の寄与

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  • Contributions of the Large-Scale Environment to the Typhoon Genesis of Faxai (2019)

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抄録

<p> 本研究は、2019年の台風Faxaiの発生に対する大気および海洋の寄与の定量化を行った。熱帯低気圧発生スコア(TGS)を用いた統計解析では、後に台風Faxaiに発達した熱帯擾乱(Pre-Faxai)が偏東風波動(EW)に起因することを示した。TGSグリッドバージョン解析によって評価したPre-Faxaiの発生領域平均のEWスコア(Grid-EW)は、気候値の約2倍であり、過去38年間でも2番目に大きな値であった。Pre-Faxaiの位置に対応する高Grid-EW領域は、2019年8月25日頃に北太平洋東部にまでさかのぼることができる。高Grid-EW領域は低気圧性循環を伴い、その循環中心では深い対流が立つことで湿潤域を維持していた。この高Grid-EW領域は、背景風により西へ移動して北太平洋西部に到達した。気象庁版SHIPS (TIFS )により、Faxaiの発生に重要な環境場は、海洋と鉛直シアであることを示した。海洋条件はPre-Faxaiが北西太平洋上を移動するときから貢献していた。しかし、対流圏上層に発生した寒冷渦により、その地域の鉛直シアが増加して、一時的にPre-Faxaiの発達は抑制された。その後、寒冷渦の弱化に伴って鉛直シアが低下した9月4日に、Pre-Faxaiは熱帯低気圧の強さにまで達した。したがって、TGSとTIFSは台風Faxaiが発生する10日前にその予兆を検出しており、これらの手法を用いた偏東風波動や鉛直シアのモニタリングは防災のためにも重要である。</p>

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 100 (4), 617-630, 2022

    公益社団法人 日本気象学会

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (36)*注記

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