慢性膵炎急性増悪に合併した皮下結節性脂肪壊死症の 1 例

  • 曽 遥
    順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター皮膚科
  • 植木 理恵
    順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター皮膚科
  • 清水 智子
    順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター皮膚科
  • 平井 周
    順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター病理診断科

書誌事項

タイトル別名
  • A Case of Pancreatic Panniculitis Associated with Acute Exacerbation of Chronic Pancreatitis
  • マンセイスイエン キュウセイ ゾウアク ニ ガッペイ シタ ヒカ ケッセツセイ シボウ エシショウ ノ 1レイ

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抄録

<p>75 歳,男性。3 週間前より出現した右背部痛のため入院した。入院時の血液検査で膵アミラーゼ 1654 U/l,リパーゼ 3946 U/l と高値であり,精査で慢性膵炎急性増悪と診断した。膵炎に対する治療を開始し,入院 10 日目より両下腿に軽度圧痛を伴う紅色皮下結節が多発し,右鼠径部にも浮腫状紅斑が出現した。両部位より皮膚生検を行い,下腿の病理組織学的所見では小葉中心性脂肪織炎および Ghost-like cell が得られ,皮下結節性脂肪壊死症と診断した。皮下結節性脂肪壊死症は膵疾患のうち 0.34%に合併する比較的まれな疾患であり,その発症機序は未だ解明されていない。以前は膵逸脱リパーゼによる全身の脂肪組織の変性壊死と考えられていたが,現在では膵臓および周辺組織の破壊により誘導されたサイトカインが引き起こす全身性炎症反応症候群(SIRS)であるという仮説がある。自験例においては食事再開後に慢性膵炎が再燃し膵逸脱酵素の再上昇がみられたが皮疹の再増悪はみられず,後者の仮説を支持するものと考えた。また自験例では右鼠径部の皮膚生検において隔壁性脂肪織炎がみられており,右下腿とは病理組織学的所見が異なった。しかし好発部位は下腿であるが,躯幹への発症例も報告されていることや,下腿と同時に出現し共に浮腫状で循環不全の関与が考えられることから,一元的なものと考えられ,今後小葉中心性脂肪織炎に進展するまでの過程であった可能性を考えた。</p>

収録刊行物

  • 西日本皮膚科

    西日本皮膚科 84 (3), 207-210, 2022-06-01

    日本皮膚科学会西部支部

参考文献 (1)*注記

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