安曇野市大口沢採石場の貝化石密集層に産する燐灰石含有方解石質団塊の成因

DOI
  • 森清 寿郎
    地学団体研究会松本支部 信州大学理学部理学科地球学コース

書誌事項

タイトル別名
  • Origin of apatite-bearing calcitic nodules from the shell-concentrated bed in Ohkuchizawa quarry, Azumino City, central Japan

抄録

<p>安曇野市の大口沢採石場には貝化石密集層が一枚あり,その層から燐灰石や苦灰石を含むが方解石が優勢な方解石質団塊が大量に産出する.密集層以外では,方解石質団塊はみとめられず,産出したのは苦灰石及び菱鉄鉱団塊だけであった.大口沢採石場に産する各種団塊の炭素・酸素同位体比を測定し,貝化石密集層においてのみ方解石質団塊が産する理由を研究した.方解石と苦灰石の同位体比は,青木層陸化後の地下水の浸透によって,晶出時の値から改変されている.しかし地下水と平衡にある方解石の同位体比を基にして,改変前の同位体比の推定が可能であった.燐灰石を含む方解石質団塊タイプ 1の晶出時 δ13Cは −5~ +2‰であり,その団塊の方解石の炭酸イオンが貝の炭酸塩殻と有機物の両方に由来することを示す.硫酸塩還元初期までは,間隙水は低 pHとなるため Ca炭酸塩に関して不飽和であった.そのため,貝化石密集層中の貝殻が部分的に溶解した.この低 pH時に燐灰石が晶出した.その後硫酸塩還元の進行によって,間隙水のアルカリ度と pHが上昇し,方解石が晶出した.硫酸塩還元が進み,間隙水中の SO42−が枯渇するとメタン発酵となり,この時に苦灰石が晶出した.貝化石密集層においてのみ方解石質団塊が生成したのは,貝の炭酸塩殻溶解の結果,間隙水の Ca/Mg比が海水値より上昇したためである.</p>

収録刊行物

  • 地球科学

    地球科学 76 (2), 63-86, 2022-04-25

    地学団体研究会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390574570124319744
  • DOI
    10.15080/agcjchikyukagaku.76.2_63
  • ISSN
    21897212
    03666611
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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