説明
サルコペニアは, 筋肉量の減少及び筋機能低下が進行する筋肉の疾患である. 周術期においては, 加齢のみなら ず疾患や手術に伴う炎症, 手術後のベッド上安静, 低栄養もしくは栄養摂取不足といった二次性サルコペニアの原 因となる状況が多く存在する. 術前サルコペニアが予後不良因子であることは多く報告されているが, 近年は入院 によるサルコペニアの新規発症や術後短期間における筋量低下と予後悪化の関連性についても報告されはじめてい る. そこで我々は, 術後サルコペニアモデルラットを作製し, 術後短期間における輸液栄養管理ならびに運動の影 響について検討を行った.<br> F344/Fisher ラットの外頸静脈にカテーテルを留置した後に開腹術侵襲を加え, その後5 日間後肢懸垂状態とす ることで後肢に廃用性筋萎縮を誘導した. この期間中の栄養管理としてアミノ酸含有の末梢静脈栄養輸液もしくは アミノ酸不含の糖加電解質輸液を同エネルギー量で投与し、運動介入として1 日1 時間の後肢懸垂解除による間歇 荷重負荷を行った. 評価指標として、解剖時における後肢の筋力及び筋量, さらに骨格筋の遺伝子発現変化ついて 検討を行った.<br> その結果、手術侵襲と後肢懸垂を組み合わせることで作製した術後サルコペニアモデルラットは、術後短期間で 筋力及び筋量の低下を呈し、特にアミノ酸非投与でその低下が顕著であった。これに対し、輸液アミノ酸投与と運 動の併用により、筋力ならびに筋量の低下改善が確認され、腓腹筋の遺伝子発現解析からは筋萎縮関連遺伝子の発 現抑制やミオシン重鎖アイソフォームの遺伝子発現レベルでの速筋化の抑制が認められ、関与メカニズムの一端と 推定された。<br> これらの結果より、輸液アミノ酸投与と運動の併用は術後サルコペニアの進展予防に有効な介入方法であること が示唆された。
収録刊行物
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- 外科と代謝・栄養
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外科と代謝・栄養 56 (3), 47-, 2022
日本外科代謝栄養学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390574577623834624
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- ISSN
- 21875154
- 03895564
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- Crossref
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可