光血栓性脳梗塞モデルマウスにおいてミノサイクリンが病態進行に与える効果
書誌事項
- タイトル別名
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- Effect of minocycline on pathological progression in the infarct brain of the photothrombosis mouse model
説明
<p>【背景および目的】わが国では、死因の第三位が脳血管疾患であり、脳血管疾患死亡数の半数以上を脳梗塞が占めている。脳梗塞発症後の超急性期において、血流量が低下している領域で細胞死を逃れている部位であるペナンブラ領域では、早期の血流再開が細胞を救うことになるが、それと共に、脳梗塞の病態進行には、ミクログリアを中心とした免疫細胞が関与する炎症と組織修復が重要である。テトラサイクリン系抗菌薬として知られているミノサイクリンはマイコプラズマ肺炎やクラミジア感染症等の特殊な細菌による感染症治療で使用されている薬剤である。一方で、ミノサイクリンは脳内マクロファージとして知られているミクログリアの活性化を抑制する効果が知られている。そこで本研究では、抗菌薬として使用されているミノサイクリンが、脳梗塞の病態進行に与える影響について解析を行った。</p><p>【方法】成体ICRオスマウスを用い、光血栓性脳梗塞モデルを作製した(Hasegawa et al. (2020) BPB Reports 3: 208-215.)。脳梗塞作製後から、解析前日までミノサイクリン(45 mg/kg b.w./day)を投与し、3日目に脳を摘出、免疫染色を行った。さらに、同様の処置をしたマウスの大脳皮質梗塞部位と反対側の健常部位から総RNAを抽出し、定量的RT-PCRを行い解析した。</p><p>【結果および考察】免疫染色の結果、コントロールとして生理食塩水を投与した脳に比べ、ミノサイクリンを投与した脳では、ミクログリアのIba1発現が低下し、活性が抑制されている事を確認した。また抗GFAP抗体による免疫染色でアストロサイトの形態について検討を行ったところ、アストロサイトの細胞体が大きく、突起の起始部が太い傾向が見られた。これらの結果から、ミクログリアの活性化がアストロサイトの形態と活性化を制御している可能性が考えられた。本結果を基に、ミノサイクリンが脳梗塞の病態進行に対して与える影響(ベネフィットとリスク)について論じたい。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 49.1 (0), O-21-, 2022
日本毒性学会