ヒトiPS細胞由来心筋細胞を用いた収縮力評価
書誌事項
- タイトル別名
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- Contractility evaluation using human induced pluripotent stem cell-derived cardiomyocytes
説明
<p>【背景・目的】創薬研究においてヒトiPS細胞由来心筋細胞(hiPS-CM)が新たな心毒性評価ツールとして期待されている。一方で近年抗がん剤による心毒性が問題となっており、腫瘍循環器学と呼ばれる新たな学際領域が注目されている。抗がん剤の中には心筋の収縮力に影響を及ぼすものがあり、その評価にhiPS-CMの利用が有望視されている。しかし収縮測定方法として従来用いられているインピーダンス法は、収縮をインピーダンス変化として間接的に捉えるのみで収縮力の大きさを直接測定できない。そこで我々はhiPS-CMを用いた真の収縮力評価のために、FLEXcyte96(FLEX;ナニオン社)を国内初導入した。FLEXでは薄い膜上で細胞を培養し、膜の動きを検知することで収縮力を測定する。またhiPS-CMは成人の心筋細胞と比較して未成熟な性質を持つが、心臓の柔らかさを模した膜上で培養することで細胞の成熟も促進されると考えられている。今回我々は収縮力評価に最適な培養条件を検討した。更にインピーダンス法と比較を行った。【方法・結果】2種のhiPS-CM(A、B細胞)を7日間培養しFLEXを用いて収縮力を測定した。また培養に用いる細胞外基質としてラミニンとフィブロネクチンを比較した。その結果A細胞をフィブロネクチンを用いて培養することで細胞が安定した拍動を示した。次に微小電極プレート上で細胞を培養し、収縮によるインピーダンス変化をCardioExcyte96(CE;ナニオン社)を用い測定した。この結果とFLEXの結果を比較したところ、CEで見積もることのできない陽性変力作用がFLEXで確認された。【考察】FLEXに適した培養条件を見出し、化合物の心筋に対する作用をより正確に検出することが可能になった。柔らかい膜上で適切な条件で培養することで、細胞が成熟し、感度良く化合物の作用を検出することが期待される。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 49.1 (0), P-222-, 2022
日本毒性学会