各評価機関による既存化学物質の人有害性評価の違いとその科学的背景について
書誌事項
- タイトル別名
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- Differences in human hazard assessments of existing chemicals by different evaluation organizations and their scientific backgrounds
抄録
<p>多くの研究者により既存化学物質の生体への影響が研究され、国内外のリスク評価機関によって人健康に関する有害性評価が行われてきた。理想的にはヒトのデータに基づき評価することが望ましいが、職業暴露による有害性影響に関する疫学調査データは、他物質との混合曝露や喫煙などの要因により、評価に用いることが困難な場合が多い。そのため、多くの場合、変異原性試験や実験動物を用いた発がん性試験成績から人健康に係る有害性評価が行われるが、発がん性に関しては閾値の有無の判断が大きなポイントとなる。例えば、アクリロニトリルは多くの機関が遺伝毒性物質として扱い、発がん性は閾値無しとして評価されてきた。2016年の化審法の評価Ⅱでも、本物質を閾値のない遺伝毒性発がん物質として評価し、有害性評価値を導出している。一方、2018年に発出されたECHA RAC Opinionでは、変異原性がないとは結論できないものの、ラットの脳腫瘍形成の主なメカニズムは、間接的なDNA損傷(酸化ストレス)の可能性が高いとの判断から、発がんに関して閾値有りの立場で評価している。また、2003年の環境省中央環境審議会第七次答申では、ヒトに発がん性を示すという適切な証拠があるとはいえないことから、発がん性以外の有害性に基づき環境基準・指針値が設定されている。このように、評価機関や評価時期により異なった評価結果がもたらされている。今回、これらの各機関がどのような目的で、どのような有害性データに重点を置いて評価しているかなどの相違点を整理した。その結果、最新の科学論文等を踏まえても、現在入手できる知見では、未だに変異原性と発がん性に関する明確な機序が確定できないことによる評価の揺らぎがあることが判った。環境経由で慢性的に暴露される化学物質の人健康影響評価のあり方を整理する上でも、今後も毒性機序の詳細を明らかにする努力が必要と考えられた。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 49.1 (0), P-261-, 2022
日本毒性学会