鳥類における脳の性分化異常を検出する分子マーカーの探索

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タイトル別名
  • Searching for molecular markers to detect abnormalities of brain sexual differentiation in birds

抄録

<p>農薬や殺虫剤など環境中に拡散した化学物質による野生鳥類の繁殖能力の低下が懸念されている。鳥類では胚期の卵巣から分泌されるエストロゲンが脳の性分化に重要であることが知られている。雌成鳥を介して卵に移行したエストロゲン様化学物質は発達中の脳の性分化に悪影響を及ぼすことで、次世代に繁殖異常が生じる可能性がある。しかし、鳥類における脳の性分化機構は不明な点が多く、その異常を迅速かつ正確に検出する手法は確立されていない。本研究では、鳥類脳の性分化異常を検出する分子マーカーを探索する目的で、性分化の臨界期にあるウズラ胚の視床下部において発現量に性差があり、エストロゲン感受性を有する遺伝子を解析した。孵卵12日の雌雄ウズラ胚の脳から視床下部を切り出し、トータルRNAを抽出した後、RNAシーケンスによる網羅的遺伝子発現解析によって、雌雄間の遺伝子発現量を比較した。次いで、孵卵6日にエストラジオールベンゾエート(EB)を投与した雄ウズラ胚を孵卵12日まで培養した後、同様の方法を用いて、視床下部におけるEB投与雄の遺伝子発現量を対照区と比較した。その結果、孵卵12日胚の視床下部において発現量に性差が認められた遺伝子は152個あり、EB投与によって発現量が変化した遺伝子は92個であった。さらに、性差遺伝子152個とEB感受性遺伝子92個を比較した結果、両者に共通する遺伝子は6個であった。これらは、性分化の臨界期にある視床下部において発現量に性差とエストロゲン感受性を有する遺伝子であることから、鳥類脳の性分化に重要な役割を果たすと考えられる。現在、6遺伝子の発現量の性差、経時変化およびエストロゲンによる影響について、リアルタイムqPCR 法による詳細な解析を進めている。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390574666166590592
  • DOI
    10.14869/toxpt.49.1.0_p-221
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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