ゼブラフィッシュにおけるアセトアミノフェン強制経口投与後の薬物動態
書誌事項
- タイトル別名
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- Pharmacokinetics of acetaminophen in zebrafish after forced oral administration
抄録
<p>【目的】魚類における化学物質の経口曝露方法としては、飼育水に添加する方法や餌に混合する方法が汎用される。しかしこれらの方法では、化合物の摂取量が魚の自発的な取り込みに依存するため、医薬品の毒性評価などで厳密に投与量を制御したい場合には、強制経口投与法を適用する必要がある。強制経口投与によるゼブラフィッシュの毒性評価については多数報告があるものの、その薬物動態に関する報告は少ない。そこで我々は、ヒトや哺乳類において消化管吸収性が良好、かつ複数の代謝物が知られているアセトアミノフェン(以下AAP)を用いて、ゼブラフィッシュにおける強制経口投与後の薬物動態について検討した。投与は無麻酔下での強制経口投与法(Fundam Toxicol Sci. 8: 183-187. 2021.)を用いた。</p><p>【方法】ゼブラフィッシュにAAP水溶液を 50 μg/10 μL/gの投与量で投与し、個別飼育した。投与0.25~4時間後に麻酔下にて眼窩から血液を採取し、LC-MSを用いて血液中のAAP及びその代謝物の濃度を分析した。また、投与1時間後に飼育水を回収し、水中のAAP量についても分析した。</p><p>【結果・考察】血液中のAAPは投与0.25時間後に最高血中濃度に達した後、4時間後にはその1/20の濃度まで減少した。血液中からの消失半減期は約1時間であった。さらに、哺乳類と共通の代謝物である硫酸抱合体やグルクロン酸抱合体が検出され、その濃度は投与4時間後で最大であった。また、投与1時間後の飼育水中からは、投与量に対し16%のAAPが検出され、これらは排泄、あるいは口腔からの逆流による漏出に起因したものと推察された。以上より、ゼブラフィッシュにおける強制経口投与後のAAPは、少なくとも84%以上が体内に曝露され、速やかに吸収されて血液中に移行した後、哺乳類と同様に抱合代謝を受け消失することが明らかとなった。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 49.1 (0), P-234-, 2022
日本毒性学会