がん悪液質モデルマウスに出現する心機能障害と自発運動負荷がもたらす治療的効果

DOI
  • 野中 美希
    東京慈恵会医科大学 疼痛制御研究講座
  • 柿木 亮
    城西国際大学 経営情報学部
  • 岸田 昭世
    鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 発生発達成育学講座 医科学分野
  • 大島 佳織
    東京慈恵会医科大学 疼痛制御研究講座 東京大学大学院 医学系研究科 病因・病理学専攻
  • 後藤 元秀
    産業医科大学 産業生態科学研究所 職業性中毒学
  • 上園 保仁
    東京慈恵会医科大学 疼痛制御研究講座
  • 上野 進
    産業医科大学 産業生態科学研究所 職業性中毒学

書誌事項

タイトル別名
  • Cardiac Dysfunction in the Mouse Model of Cancer Cachexia and Therapeutic Effects of Voluntary Exercise

抄録

<p>【目的】がん悪液質は心機能障害を伴うことが報告されているが、ヒトの臨床像を反映する適切なモデル動物が少ないため、がん悪液質と心機能との関連は未だ不明な点が多い。我々はヒト胃がん細胞株85As2を移植したマウスが、ヒト悪液質と類似した症状を示すモデルになることを見出している。本研究では同モデルを用い、心機能障害の分子メカニズムとともに自発運動(回し車)による治療効果についても検討を行った。</p><p>【方法】85As2細胞を8週齢の雄性BALB/cヌードマウスの両腹皮下に移植し、移植後2週目より悪液質症状を呈するモデルを作製した。本研究では移植後2週目を前悪液質群、移植後8週目を悪液質群と定義し、同週齢対照群との比較から心機能を含む悪液質病態の評価、ならびにこれらに対する自発運動負荷の効果を検討した。</p><p> 【結果】同齢の対照群と比較し、前悪液質群ならびに悪液質群ではともに心重量が有意に減少し、特に悪液質群では減少が顕著であった。さらに左室駆出率(LVEF)についても前悪液質群、悪液質群で有意に減少していた。一方、マウスの心筋を用いてマイクロアレイ解析を行ったところ、心不全との関連性が報告されていないE3ユビキチンリガーゼに属する酵素 Xの遺伝子発現量が増加していた。また、回し車による自発運動負荷により、悪液質モデルの摂餌量と心重量の低下は抑制され、さらにはXの遺伝子発現量増加の抑制も認められ、LVEFも改善した。</p><p> 【結語】85As2細胞移植によるがん悪液質モデルマウスにおいて、自発運動負荷は悪液質症状のみならず心機能障害も改善することが明らかとなった。またマイクロアレイ解析で変動のあった酵素Xの遺伝子発現量は、心筋萎縮とともに増加し自発運動負荷により減少することから、がん悪液質に伴う心機能障害と関連があると考えられる。現在、酵素Xを介する経路についてさらに解析を進めている。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390574666166611840
  • DOI
    10.14869/toxpt.49.1.0_p-154
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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