ヒ素メチル基転移酵素の選択的スプライシングの研究から同定した新しいヒ素毒性発現機構
書誌事項
- タイトル別名
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- Investigation of arsenic toxicity identified from the research of alternative splicing of arsenic (+3 oxidation state) methyltransferase
抄録
<p>無機ヒ素化合物は、生体内においてヒ素メチル基転移酵素(AS3MT)によってメチル化代謝を受け排泄されることがわかっている。我々はAS3MTに着目し研究を進めたところ、AS3MT mRNAが選択的スプライシングを受けていることを見出した。また、過酸化水素への曝露により、新しいスプライシングバリアントを見出した。その機序を探る目的で、AS3MTのスプライシングに関わる因子として候補に挙がったSerine/arginine-rich splicing factor(SRSF)5についてタンパク質量を測定したところ、過酸化水素によりSRSF5の発現量が減少していた。そこで、SRSF5 をsiRNAによりノックダウンした細胞では、正常なAS3MT mRNAが産生されず、ヒ素毒性が上昇すると考えた。SRSF5のsiRNAを導入したヒト表皮角化HaCaT細胞において、亜ヒ酸(As(III))に対する感受性を検出したところ、As(III)に対する感受性は上昇したものの、AS3MT mRNAは影響を与えられていなかった。次に、SRSF5 siRNAを導入したHaCaT細胞においてmRNA量が変動している遺伝子群を検討し、その中からAs(III)の感受性に関わる因子の同定を試みた。SRSF5 siRNAにより2倍以上mRNA量が低下している155遺伝子のうち、転写産物の機能が明らかになっている遺伝子のsiRNAを別々に導入したHaCaT細胞におけるAs(III)の感受性を検討した。その結果、Forkhead Box A1 siRNAの導入によってのみAs(III)に対する感受性が顕著に上昇した。以上の結果から、亜ヒ酸の毒性に関わる新しい因子としてSRSF5-FOXA1経路を見出した。本シンポジウムでは、スプライシング異常の発見から新しいヒ素の毒性発現機序の同定に至る研究結果を紹介したい。</p>
収録刊行物
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- 日本毒性学会学術年会
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日本毒性学会学術年会 49.1 (0), S18-2-, 2022
日本毒性学会