COVID-19心筋重症化のメカニズムとその治療戦略

DOI
  • 加藤 百合
    九州大学大学院薬学研究院 生理学分野
  • 西山 和宏
    九州大学大学院薬学研究院 生理学分野
  • 諫田 泰成
    国立医薬品食品衛生研究所 薬理部
  • 西田 基宏
    九州大学大学院薬学研究院 生理学分野 自然科学研究機構生理学研究所(生命創成探究センター) 心循環シグナル研究部門

書誌事項

タイトル別名
  • Mechanism of COVID-19 myocardial severity and its therapeutic strategy

説明

<p>心疾患は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化の主たる症状の一つであると共に、主たる重症化リスク因子にもなることが報告されている。当研究室では、慢性心不全の進行に伴って生じる心筋組織リモデリングにおいて、心筋細胞膜上に存在する2つのタンパク質(transient receptor potential canonical (TRPC) 3チャネルとNADPH酸化酵素(Nox2))の複合体形成が仲介分子となることを報告してきた。我々は、様々なCOVID-19重症化リスク因子(高血糖、喫煙、抗がん剤)のラット初代培養心筋細胞膜への曝露によりTRPC3-Nox2タンパク質複合体が形成され、その結果、心筋細胞の萎縮(衰弱)が誘導されるとともに、ACE2 mRNA発現量も増加することを新たに見いだした。TRPC3-Nox2タンパク質複合体形成を阻害する既承認薬は、抗がん剤処置による心筋細胞萎縮のみならず、ACE2 mRNA発現増加も抑制した。そこで、TRPC3-Nox2複合体形成を抑制する既承認薬上位13種類の中から、SARS-CoV-2の膜表面spikeタンパク質誘発性ACE2内在化も強く抑制しうる薬の探索を行ったところ、三環系抗うつ薬クロミプラミンを同定した。クロミプラミンは、ヒトiPS細胞由来心筋細胞へのSARS-CoV-2感染と心機能障害・心筋代謝機能障害を強く抑制した。以上の結果は、COVID-19重症化リスク因子がACE2発現増加を介して心筋障害を引き起こすとともに、この経路を阻害する既承認薬がCOVID-19心筋重症化の予防・治療に適応できることを強く示唆している。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390574666166674304
  • DOI
    10.14869/toxpt.49.1.0_s23-1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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