嚥下障害に対する理学療法の即時効果を認めた胸部食道癌術後長期経過の1 例

書誌事項

タイトル別名
  • A Case of Immediately Effective Physical Therapy for Swallowing Difficulty Observed in a Long-Term Patient Following Thoracic Esophageal Carcinoma Surgery
  • エンカ ショウガイ ニ タイスル リガク リョウホウ ノ ソクジ コウカ オ ミトメタ キョウブ ショクドウ ガン ジュツゴ チョウキ ケイカ ノ 1レイ

この論文をさがす

抄録

<p>【緒言】胸部食道癌術後長期経過し不良姿勢に起因する嚥下障害患者に対して,理学療法(以下,嚥下理学療法)を行い即時改善が認められた症例を経験したので報告する.</p><p>【症例】70 歳代後半の男性.5 年前に胸部食道癌の手術を施行.食事摂取量低下での低栄養や臥床時間の延長による低活動,嚥下機能低下のため在宅生活困難となり入院.呼吸数は24 回/ 分.筋力は舌骨上筋機能グレード(GS グレード)でGr.2.筋緊張は後頭下筋群や舌骨上筋群,舌骨下筋群,胸鎖乳突筋,大胸筋などが過緊張.関節可動域は頭頸部屈曲位にてオトガイ–胸骨柄間距離9 cm.姿勢は頭部前方位の背臥位にて頭部–ベッド間距離が19 cm,肩甲骨外転位と胸椎後弯増強位は背臥位にて肩峰–ベッド間距離が9 cm.主観的飲み込みやすさに関する質問紙は2.食事摂取量は7 割.食事中の咳込みあり.</p><p>【経過】嚥下理学療法により不良姿勢に対してストレッチやモビライゼーションを施行し,改善効果の持続を目的に筋再教育練習や呼吸練習を行った.単回の介入で,呼吸数は22 回/ 分.筋力はGS グレードでGr.2,筋緊張は上記筋群の過緊張が軽減.関節可動域は頭頸部屈曲位にてオトガイ–胸骨柄間距離9 cm から6 cm に改善.姿勢は頭部–ベッド間距離が19 cm から9 cm,肩峰–ベッド間距離が9 cm から6 cm に改善.主観的飲み込みやすさに関する質問紙は5.食事摂取量は全量摂取.食事中の咳込みなし.</p><p>【考察】関節可動域の拡大と筋緊張の緩和に伴う姿勢変化や呼吸機能向上により嚥下状態が改善し,食事中の咳込みが消失したのではないかと推測した.GS グレードは介入後もGr.2 で変化はなかったが嚥下状態は改善していた.このことから,嚥下機能を低下させている可動域制限や筋長,過緊張などの因子を多角的に評価し,的確な介入を行うことで単回でも嚥下状態の改善を図ることができると考えた.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ