『唯識二十論』第1偈について

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タイトル別名
  • On the First Verse of Vasubandhu’s <i>Viṃśikā</i>
  • On the First Verse of Vasubandhu's Vimsika

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抄録

<p> ヴァスバンドゥ(Vasubandhu, 5世紀頃)著作『唯識二十頌』(Viṃśikā)および自注『唯識二十論』(Viṃśikāvṛtti)の第1偈および冒頭部分では,三界唯識が説かれることで知られる.しかしながら,『唯識二十頌』のサンスクリット写本およびチベット訳では第1偈が存在する一方,『唯識二十論』のチベット訳では第1偈が存在せず,類似した文言が散文として提示されている.漢訳についても,般若流支訳『唯識論』および真諦訳『大乗唯識論』では第1偈が存在する一方,玄奘訳『唯識二十論』では第1偈が存在せず,体裁をはじめとして軌を一にしない.</p><p> したがって本稿では『唯識二十頌』・『唯識二十論』のテキストおよび上述の諸訳,および複注などの記述を精査した.まず,玄奘訳『唯識二十論』やヴィニータデーヴァ(Vinītadeva)による複注(*Prakaraṇaviṃśikāṭīkā)では,体裁の違いや韻文の有無などから,両者が『唯識二十頌』を参照していない可能性が高い.次に窺基の著作『唯識二十論述記』では,すでに先行研究で指摘されていることであるが,般若流支および真諦訳を批判する箇所があり,ヴァイローチャナラクシタ(Vairocanarakṣita)の複注(Viṃśikāṭīkāvivṛti)では『唯識二十頌』第1偈の著者問題に関する記述がある.これらの記述から『唯識二十頌』は特定の地域,ナーランダーに伝播しなかった可能性が高いと結論付けた.</p>

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