唯識思想史におけるダルモーッタラの位置づけの再考

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  • Reconsidering Dharmottara’s Place in the Intellectual History of the Consciousness-Only Theory

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抄録

<p> ダルマキールティ(ca. 600-660)以降の仏教瑜伽行派の思想家たちは,認識の形象の実在性を認めるか否かという観点から,形象真実論者と形象虚偽論者とに分けられる.この思想的対立は,ジュニャーナシュリーミトラ(ca. 980-1040)とラトナーカラシャーンティ(ca. 970-1030)の間において顕著にみられ,先行研究でも何度も取り上げられてきた.しかし,彼らに先行するダルモーッタラ(ca. 740-800)に関しては,従来の研究ではチベット撰述にみられる唯識思想の分類に基づき彼を「形象虚偽論有垢説」を標榜する唯識思想家として分類するだけにとどまり,その思想の内実は明らかにされてこなかった.チベット撰述での唯識思想の分類は,ジターリによる五分類に基づいていたものであるが,ジターリの議論を正しく反映したものとは言い難い.一方,ジターリ(ca. 960-1040)は,ダルモーッタラの思想を正確に読み込んだ上でその要点を抽出している.</p><p> 本稿は,ジターリによるダルモーッタラの唯識思想の理解と,その典拠となっているダルモーッタラの言明を提示することで,唯識思想史におけるダルモーッタラの位置づけに関する一資料を提供する.</p>

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