ホロコーストと心理学:日常の中で無自覚になるものー2019年ベルリン・リサーチ・プロジェクトからー

書誌事項

タイトル別名
  • Holocaust and Psychology : What is to be Unaware in Surviving Everyday LifeーReport on 2019 Research Project in Berlinー
  • ホロコースト ト シンリガク : ニチジョウ ノ ナカ デ ムジカク ニ ナル モノ : 2019ネン ベルリン ・ リサーチ ・ プロジェクト カラ

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抄録

2019年3月のベルリン・リサーチ・プロジェクトを通じて行われたホロコーストに関する論考である。ホロコーストについては,こわいこととして遠ざけられがちなことや,悲惨な出来事でそれが二度と起こらないようにともっぱら声高に宣伝されることが多い。しかし,本稿ではそれに関わっていくことの重要性を述べるとともに,そのためのひとつの心理学的な切り口として,よいものであろうとする人間の心のありようを概説する。悪を自分のものとして体験できずに投影し,また,よい/悪いに分裂してものごとをとらえて自らの安定のために理想化や否認といった原始的で未熟な防衛機制を用いてふるまうことがホロコーストにおいても,その後のホロコーストのとらえ方においても生じていることを例証した。特に,加害者とされる人々の叙述からうかがわれる否認と,現代にいたるまでの救助者に対する理想化について詳述し,自らの暴力性に無自覚になること,また生きのびていくことが重視されること,ひいては道徳的な善悪について考察した。

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