不連続な支持基体におけるニホンザルのラテラル・シーケンス歩容と霊長類的歩容の進化要因に関する考察

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タイトル別名
  • Lateral sequence quadrupedal gait on discontinuous substrates in Japanese macaques

抄録

<p>ニホンザルはDiagonal sequence – diagonal couplet (DSDC) 歩容を主に用いる。樹上の不連続な樹枝(支持基体)の上を歩く霊長類は、新たな樹枝を掴む前肢に体重が移る前に後肢を身体重心下に置くことで、新しい樹枝が折れるといった事態に備える必要があり、DSDC歩容はこの条件を満たすと言われている。しかし、Lateral sequence – lateral couplet (LSLC) でも前肢の着地直前に後肢が身体重心下に着くことが報告されており、未だ霊長類におけるDSDCの進化要因は特定されていない。本研究では、DSDC歩容の選択には別の要因も関与しているという仮説に基づき、不連続支持基体と歩容選択の関係を実験的に調査した。具体的には、ニホンザルに以下の3種類の支持基体上を四足で歩行させ、その歩容を解析した;G:地上条件、Ld:直径15 cmの円形木板を20cm間隔でマス目状に不連続に配置した条件、Sd:直径約5 cmの円形金属を20cm間隔でマス目状に不連続に配置した条件。その結果、GとLdではニホンザルは主にDSDCを用い、SdではLateral sequence – diagonal couplet (LSDC)で歩いた。また、不連続なLdとSdでは、高い頻度で同側前後肢が近接して着地した。本研究から二つの知見が得られた。まず、ニホンザルが特定の支持基体上ではLSを使用することが明らかになった。次に、不連続な支持基体では、同側前後肢の着く位置が近接していることから、ニホンザルは前肢の位置を手がかりに後肢の着地位置を制御すると考えられた。先行研究が示すように、前肢着地前に後肢が身体重心下に着く歩容はDSDCとLSLCである。一方、本研究から、前肢が後肢を誘導する歩容はDSDCとLSDCであり、DSDCだけがそれら両方を満たす歩容であることが分かった。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390575141547010176
  • DOI
    10.14907/primate.38.0_31
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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