Function and constraint of infant handling in wild Japanese macaques

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  • 野生ニホンザルにおける他個体のアカンボウに接触する行動の機能と制約

Abstract

<p>霊長類の多くの種では、母親以外の個体がアカンボウに接触する行動が日常的に観察される。この行動はinfant handling(IH)、アカンボウに接触する個体はハンドラーと呼ばれる。IHは多くの場合、ハンドラーに大きな負担のかかる行動でないが、ハンドラーはときにアカンボウを長時間拘束するなど、アカンボウに悪影響を及ぼすことがある。また、ハンドラーはアカンボウの母親から攻撃されることもある。では、ハンドラーはなぜIHを行うのだろうか。本研究では、野生ニホンザルを対象に、IHの機能について、子育て練習仮説、血縁選択仮説、メス間競争仮説の3つの仮説を検討した。宮城県金華山に生息する野生ニホンザル群を3年間観察し、観察期間中に生まれたアカンボウとその母親24組を対象に、誕生から12週齢まで約1000時間の行動データを収集した。また、普段から母親により近づいている個体がより多くのIHを行う可能性を検討するため、母親の1m以内に出入りした近接個体も記録し、母親とハンドラーが1m以内にいた時間の割合(近接率)を算出した。分析の結果、IHは主にメスによって行われていた。また、メスによるIHでは、近接率が高い未経産個体と血縁個体が、とくに高頻度でIHを行っていた。さらに、血縁個体は非血縁個体よりもより丁寧にアカンボウを扱っていた。経産メスのハンドラーによるIHでは、アカンボウは非血縁個体よりも血縁個体からより高頻度でIHを受け、乱暴な扱われ方の割合には、ハンドラーの血縁の有無で有意な差はなかった。これらの結果から、子育て練習仮説と血縁選択仮説の予測が支持された。また、アカンボウの母親との近接率が低いメスは、未経産・血縁メスであってもIHの頻度が低かったことから、アカンボウに接触するためには、日ごろからの母親との付き合いが重要である可能性が示唆された。</p>

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