The influence of food environment on the frequency of rough-and-tumble play in wild Japanese macaques (<i>Macaca fuscata</i>)

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  • 食物環境が野生ニホンザル(<i>Macaca fuscata</i>)のコドモのわんぱく遊び頻度に与える影響

Abstract

<p>ダンバーとダンバー(Dunbar and Dunbar, 1988)は、ゲラダヒヒのオトナメスの研究から食物環境が霊長類の親和的社会交渉(毛づくろい)に時間的制約を与えることを示した。遊び行動は多くの霊長類において未成熟期にのみみられ、また他個体とのあいだでおこなわれる社会的遊びは未成熟個体にとって主要な社会交渉のひとつである。代表的な社会的遊びであるわんぱく遊びは、エネルギーコストが非常に大きい点で毛づくろいとは異なるため、毛づくろいとは異なる制約を食物環境から受けている可能性がある。本研究は、食物環境の季節変化が大きい温帯に生息する野生ニホンザル(Macaca fuscata)のコドモを対象に、わんぱく遊びと毛づくろいの頻度が食物環境の変化によってどのような影響を受けるのかを明らかにすることを目的とした。調査は2020年11月~2021年2月および2021年8月~10月に鹿児島県熊毛郡屋久島町西部海岸域でおこなった。その結果、毛づくろい頻度については、ダンバーとダンバーがゲラダヒヒのオトナメスで見い出したのと同様、食物環境の悪化によって採食・移動時間割合が増加しても最初は維持されるが、さらに増えると減少した。一方、わんぱく遊びは、採食・移動時間割合が大きく増加するような季節ではそもそもほとんど生起せず、採食・移動にかける時間が少なくてすむ季節には、採食・移動時間割合が減ることによって生起頻度が増加した。このことから、わんぱく遊びは、食物環境から、時間的制約というよりもむしろエネルギー的制約を受けたと考えられる。すなわち、わんぱく遊びは、最低限のエネルギーを得るための時間的制約は充分クリアーして、さらに余剰エネルギーがあるときにはじめて生起し、増加したのではないかと考えられる。エネルギーを多く使うという点でコストが大きい分、他の行動に比べて発現のための条件が比較的厳しい「贅沢な」行動である、ということが、わんぱく遊びが「遊び」であるための重要な特徴なのかもしれない。</p>

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