日本の中小企業におけるクラウド会計導入に関する意識調査

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タイトル別名
  • An Empirical Study on Cloud Accounting Adopted by Small and Medium-Size Enterprises in Japan

抄録

<p> 本研究は,クラウド会計採用に関する中小企業経営者の意識調査と採用決定に影響を及ぼ す要因を明らかにすることを目的としている。中小企業経営者のクラウド会計に対する意識について, 1)クラウド会計の機能の効果,2)アクセシビリティー,3)コスト効率性,4)経営参画,5)堅牢性 の観点からアンケート調査を実施し,定量的データを収集した。兵庫県中小企業家同友会の会員である 中小企業経営者からデータを収集し,合計で 34 件の回答を得た。データは,クラウド会計を導入して いる中小企業(クラウド企業)と導入していない中小企業(非クラウド企業)に分類し,t検定による 分析手法を用いて統計比較を実施した。その結果,以下のような知見が得られた。1)中小企業経営者 がクラウド会計の採用を決定するかどうかは,クラウド会計の機能についての理解に依拠している。す なわち,クラウド会計の機能が会社のニーズに合致していると考えれば導入を決定し,そうでない場合 はその逆となる。しかし,非クラウド企業の経営者は,クラウド会計の機能を知らずに導入しないとい う判断を行っている傾向があることも理解できた。2)本調査に参加した中小企業経営者のほぼ全員が, クラウド会計によってユーザがさまざまな財務データに容易にアクセスできることを高く評価してい た。しかし,クラウド会計を利用する半数が会社のデスクトップ型パソコンからアクセスしていること がわかった。つまり,クラウド会計導入によるアクセシビリティーの優位性が存在するにもかかわらず 有効に活用されていない可能性が高いということである。3)クラウド会計の導入によって,従業員の 経営活動への参画が促進されるという事実は見いだせなかった。この点については,補足調査の定量的 な回答やインタビューから,クラウド会計を利用した会計システムの多様なカスタマイズ設定に焦点を 当て更なる研究が必要であることが示唆された。</p><p> これらの結果は,中小企業経営者におけるクラウド会計の導入と,その導入の意思決定に影響を与え るいくつかの重要な要因に関する新しい洞察を提供するものである。さらにこの結果は,会計専門家, 監査法人,税務当局,基準設定主体が,より良いコミュニケーションを構築するための一助となるであ ろう。</p>

収録刊行物

詳細情報

  • CRID
    1390575185894614784
  • DOI
    10.34576/jarsmes.2022.8_2
  • ISSN
    24358789
    2189650X
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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