アジア産トウヒレン属(キク科)の分類学的研究 Ⅲ . 東北地方南部からの1 新種,フボウトウヒレン

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Systematic Studies of Asian <i>Saussurea</i> (<i>Asteraceae</i>) III. <i>Saussurea fuboensis</i>, a New Species from the Southernmost Part of Tohoku District, Northern Japan

抄録

<p>トウヒレン属(キク科)の1新種,フボウトウヒレンSaussurea fuboensis Kadotaを記載した.フボウトウヒレンはシラネアザミS. nikoensis Franch. & Sav.に近縁であるが,以下のような特徴で区別される.①頭花はより小さく,筒状で,複散房花序につき,②小花の広筒部は長さ約1 mm,③茎には翼があるが,幅狭く目立たず,④茎葉の葉身は広卵形,⑤総苞片は斜上し,⑥総苞外片は狭卵形で基部で幅2 mmとなる.</p><p> フボウトウヒレンは奥羽山脈南部(船形山系,蔵王山系,吾妻連峰,磐梯山)に分布し,高山帯の草原やハイマツやミヤマハンノキを主体とする灌木林の林縁に生える.奥羽山脈南部では低所にセンダイトウヒレンS. sendaica Franch. (= S. nipponica Miq. subsp. sendaica (Franch.) Kitam.)が生育し,両種は垂直的に棲み分けている.</p><p> フボウトウヒレンの存在自体は以前から知られており,イワテヒゴタイS. brachycephala Franch.(Kitamura 1935, 1937, 山形縣植物誌 1934,山形県の植物誌 1972,新版山形県の植物誌 1992, 宮城県植物目録 1935, 白石市植物誌 1983, 宮城県植物目録2000 2001など)やミヤマキタアザミS. franchetii Koidz.(Kitamura 1935, 1937, 山形縣植物誌 1934,山形県の植物誌 1972,新版山形県の植物誌 1992, 宮城県植物目録 1935, 白石市植物誌 1983, 宮城県植物目録2000 2001など),あるいはクロトウヒレンS. sessiliflora (Koidz.) Kadota, stat. nov. [ = S. nikoensis var. sessiliflora (Koidz.) Kitam.](福島県植物誌 1987,馬場ら 1988)などと混同されてきた.しかしながら,フボウトウヒレンはこれらの3種とは次のように異なる.イワテヒゴタイは,総苞は筒形,総苞外片は狭長卵形,内片より長く,圧着し,茎葉は長卵形で葉柄に明瞭な翼がある点でフボウトウヒレンと異なる.イワテヒゴタイは岩手県岩手山と早池峰山の固有植物である.ミヤマキタアザミでは総苞は鐘形でクモ毛が多く,総苞外片は長卵形で基部は幅広く,内片と等長あるいは長く,斜上し,頭花の柄が短いため頭花が密集する傾向がある.ミヤマキタアザミは東北地方日本海側の山地(秋田駒ケ岳,焼石岳,月山,朝日連峰)に分布する.イワテヒゴタイとミヤマキタアザミは共に総苞片は5列で,頭花の基部に長い苞葉がある点でもフボウトウヒレンと異なっている.</p><p> 一方,クロトウヒレンは総苞片はフボウトウヒレンと同じく6列であるが,総苞は球状鐘形で,総苞外片はさらに幅広く(基部で幅3-4 mm),頭花の柄が短く頭花が密集することでフボウトウヒレンと区別される.クロトウヒレンは中部地方北部にかけての日本海側山地(頸城山地,飛騨山脈,白山)に分布する.</p><p> 上野雄規氏(白石市),高橋和吉氏(大崎市),葛西英明氏(仙台市),杉山多喜子氏(名取市),加藤信英氏(鶴岡市),高橋信弥氏(東根市),土門尚三氏(遊佐町),蓮沼憲二氏(会津若松市)の方々には現地調査の案内をしていただくとともに,国立科学博物館維管束植物標本庫 (TNS) に標本並びに生態写真をご寄贈いただきました.ここに記して感謝の意を表します.</p>

収録刊行物

  • 植物研究雑誌

    植物研究雑誌 84 (3), 177-183, 2009-06-20

    植物研究雑誌編集委員会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390575285351995776
  • DOI
    10.51033/jjapbot.84_3_10134
  • ISSN
    24366730
    00222062
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

問題の指摘

ページトップへ