韓国産カラタチゴケ属(カラタチゴケ科,子嚢菌門)の2 新種

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タイトル別名
  • Two New Species of <i>Ramalina</i> (<i>Ramalinaceae</i>, <i>Ascomycota</i>) from Korea
  • Two New Species of Ramalina (Ramalinaceae, Ascomycota) from Korea

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抄録

<p>韓国からRamalina intestiniformis Kashiw. & K. H. Moon と R. sphaerophora Kashiw. & K. H. Moon の2 新種を記載した.</p><p> 1) Ramalina intestiniformis は海岸の垂直に近い北向きの岩上に生育する.地衣体は匍匐またはやや下垂し,裏面のあちこちで基物にゆるく付着し高さ約1.5 cm,径3(–5) cmのクッション状.地衣体はわずかに枝分かれし,枝は基部から先端まで不規則に膨らみ先端は短くとがり,中空,穿孔を有する,径は0.5–2 mm.粉芽や裂芽はない.髄層の菌糸は連続,皮層の内壁に密着する.子器は枝の先端または側部に生じ,距はない.子器柄はくびれず,盤は初め凹むが後に隆起する.胞子は無色,2 室,13–15 × 4–5 μm.地衣成分は地衣成分はジバリカート酸,サラチン酸(±),ウスニン酸である.</p><p> 本種はR. almquistii Vain. に似ているが後者の枝は先端部でふくれることがあっても大部分は偏圧され,髄層の菌糸は集合して固まり皮層の内側はほとんど裸出するので区別できる.また,本種が海岸の岩上に限って生育するのに対し,後者はブナ帯~ハイマツ帯の日陰(多くはオーバーハングした岩の下部)に生育する.韓国特産種である.</p><p> 2) R. sphaerophora は海岸の岩上に生育する.地衣体は淡緑黄色であるが基物に付着する基部は黒褐色,裏面のあちこちで基物に固着して高さ1.0–1.5 cm,径1.0–2.0 cmのクッション状となる.枝は不規則に分枝し,径0.5–1.0(–2.0) mm.枝の大部分は中実であるが,膨らんだ部分に穿孔を生じる.粉芽や裂芽はないが,枝の先端に球状の小塊を持つ.髄層の菌糸は連続,皮層の内壁に密着する.子器は未見.地衣成分はエベルン酸,オブツザート酸,ウスニン酸である.</p><p> 本種は東アジア産のR. kurokawae Kashiw. に似ているが後者は粉芽を持ち,枝の基部が淡色である点で区別できる.本種は東アジアに広く分布するR. yasudae</p><p>Räsänen と紛らわしいが,R. yasudae の地衣体は中実で狭い基部から直立して灌木状となり,先端部や側部に粉芽を生じ点で異なる.なお,R. yasudae にも球形の小塊が見られるが,これらは常に唇状の粉芽塊の中に生じる.北半球に広く分布するR. pollinaria (Westr.) Ach. も本種に似ているが,枝は中実で粉芽を持つ点で区別できる.Krog and Swinscow (1974) は東アフリカから本種と同様に枝の先端部に球形の小塊を持つR. consanguinea Müll. Arg. とR. tapperi Krog & Swinsc. を報告している.しかしこれらは密に分枝した細い地衣体を持ちセッカ酸やジバリカート酸を含むので異なる.本種が海岸の日当たりのよい岩上に生育する.韓国特産種である.</p><p> カラタチゴケ属地衣類は地衣体の形態変異が大きく,類縁種との区別が困難である場合が多い.今回記載した2 種については,核リボゾーム遺伝子スペーサー領域(nrDNA ITS) の塩基配列に基づく最尤法による系統樹を作成して近縁種との関係を検討した.その結果,ここで記載した2 種は共に,近縁種とは独立したクレードを形成し,既知種とは異なることが示唆された.</p>

収録刊行物

  • 植物研究雑誌

    植物研究雑誌 91 (suppl), 376-387, 2016-12-23

    植物研究雑誌編集委員会

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