九州産タツナミソウ属(シソ科)の1新種,クジュウナミキ

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タイトル別名
  • A New Species of <i>Scutellaria</i> (<i>Lamiaceae</i>) from Kyushu, Southern Japan

抄録

<p>大分県九重山からシソ科タツナミソウ属のうち,花冠が基部で屈曲せずゆるやかに斜上するナミキソウ類の1新種が見出された.産地にもとづき,クジュウナミキScutellaria kujuensis Kadota & Mas. Saitoと命名した.クジュウナミキはミヤマナミキS. shikokiana Makino,とくに四国(香川県・愛媛県)・九州(大分県・宮崎県・熊本県・鹿児島県)に分布する変種のケミヤマナミキS. shikokiana var. pubicaulis (Ohwi) Kitam.に似ているが,①茎葉の上面が暗緑色で,中肋と側脈に沿って白斑があり,下面が暗紅紫色で,②花柄に小苞を欠き,③花柄や花冠,萼筒に腺毛が密生し,④下唇は凸面となり,紫色の斑点は中央裂片にのみ見られ,⑤花期が早い(6月)点で明瞭に区別される.とくに,葉身は独特の配色が印象的で,シソバタツナミS. laeteviolacea Koidz. var. laeteviolaceaやトウゴクシソバタツナミS. laeteviolacea var. abbreviata (H. Hara) H. Haraのそれを思わせる. 花冠が基部からゆるやかに斜上し,茎や葉柄,萼筒,花冠に腺毛が多い点では,クジュウナミキは中国四川省産のS. tienchueanensis C. Y. Wu & C. Chenに似ている.しかし,クジュウナミキはS. tienchueanensisから,茎葉の上面が濃緑色で白斑があり,下面が暗赤褐色である点に加えて.茎が単純で分枝せず,葉柄がより長く,苞が有柄で,花色が淡紅紫色で,小堅果がより小さいなどの点で明瞭に区別できる.</p><p>  クジュウナミキは常緑樹林ときにスギ林のうす暗い林下に生育する.地下茎はよく分枝し,白く細長いストロンを出す.種子で殖える他に,この地下茎でも繁殖しているらしく,本植物は小さな群落を形成していることが多い.現地では生育地点が少なく,また個体数が非常に少ないため,絶滅が危惧される.</p>

収録刊行物

  • 植物研究雑誌

    植物研究雑誌 93 (1), 18-22, 2018-02-20

    植物研究雑誌編集委員会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390575296421605248
  • DOI
    10.51033/jjapbot.93_1_10837
  • ISSN
    24366730
    00222062
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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