韓国産カラタチゴケ属の2 新種,<i>Ramalina cinereovirens</i>と<i>R. subdecumbens</i>(カラタチゴケ科)

書誌事項

タイトル別名
  • <i>Ramalina cinereovirens</i> and <i>R. subdecumbens</i> (<i>Ramalinaceae</i>, <i>Ascomycotina</i>), Two New Species from Korea
  • Ramalina cinereovirens and R. subdecumbens (Ramalinaceae, Ascomycotina), Two New Species from Korea

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抄録

<p>韓国からRamalina cinereovirens Kashiw., K.H.Moon & J.E.Han とR. subdecumbens Kashiw., K.H.Moon & J.E.Han(カラタチゴケ科)の2 新種を記載した.これら2 種について,核DNA のITS, IGS 領域およびミトコンドリアDNA のmtSSU 領域の塩基配列に基づく系統樹により近縁種との関係を検討した結果,両種とも近縁種とは明確に区分される独立したクレードを形成し,既知種とは異なることが示唆された.</p><p>1) Ramalina cinereovirens は海岸の岩上に生育する.地衣体は灰緑色~灰白色,樹枝状で狭い基部から不規則に分枝し,巾約2 cm,長さ約3 cm.枝は中空でやや偏圧されて表面は灰緑色,裏面は灰白色,枝の膨らみはわずかで先端はとがり,粉芽や裂芽はない.穿孔は類円形~楕円形,裏面に散在し融合しない,巾0.5–2 mm.髄層の菌糸は連続,皮層の内壁に密着する.子器は枝の表面に生じ,距はない.子器柄はくびれ,盤はほぼ平板.胞子は無色,2 室,細長い紡錘形,12.0–14.5 × 3.0–3.5μm.地衣成分はジバリカート酸かセッカ酸,サラチン酸( ± ),ウスニン酸である.本種はイソカラタチゴケR. litoralis Asahina に似ているが後者の枝は中実で 側生の細枝を密生し, 穿孔はない.本種は日本産のツヅレカラタチゴケモドキR. pertusa Kashiw. と混同される可能性もあるが、後者は樹皮生で枝の穿孔は格子状に連続し,地衣成分としてエベルン酸とオブツザート酸を含むので区別できる.本種は海岸の岩上に生育するが,済州島沖の飛揚島の一角と全羅南道の八禽島の一カ所だけで見つかっている希種である.生育場所はアキグミやテリハノイバラなどの小灌木が日陰を作る場所に限られている.</p><p>2) Ramarina subdecumbens は雪岳山系の亜高山~高山帯の岩上に生育する.地衣体は青みのある緑黄色,基部や枝の裏面は黒褐色,裏面のあちこちで基物に固着して高さ径2.0 cm ほどのクッション状となる.枝は不規則に枝分かれし中実, 通常は背復性があるが先端部では円柱状に細くなることもあり,巾0.2–1.0 mm.偽盃点は白色,点状~楕円状,枝の側部や表面に生じ往々粉芽化する.粉芽は球状で表面は菌糸の薄い膜で被われる.髄層の菌糸は連続,皮層の内壁に密着する.子器は未見.地衣成分はサラチン酸( ± ) とウスニン酸である.本種は日本産のホソカラタチゴケR. exilis Asahina と似ているが,ホソカラタチゴケの枝は常に直立し,その先端部のみに粉芽塊を生じるので区別できる.本種はカナリー諸島から報告されたR. nodosa Krog & Østh. やオマーンから報告されたR. fragilissima Krog に地衣体の形状が酷似している.しかしこれら二種は共に粉芽を欠くほか,R. nodosa はセッカ酸を,R. fragilissima はプロトセトラール酸を含むので容易に区別できる.本種は日本産のR. kurokawae Kashiw. とも似ているが,後者の枝は中空で裂芽を持ち,エベルン酸とオブツザート酸を含む点で区別できる.本種は雪岳山系の亜高山帯~高山帯に生育するが,それ以外の場所からは見つかっていない.</p>

収録刊行物

  • 植物研究雑誌

    植物研究雑誌 96 (2), 74-83, 2021-04-20

    植物研究雑誌編集委員会

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