尿沈渣中にヘマトイジン結晶を継続的に認めた1症例

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タイトル別名
  • Continuous observation of hematoidin crystals in urinary sediments
  • ニョウチンサチュウ ニ ヘマトイジン ケッショウ オ ケイゾクテキ ニ ミトメタ 1 ショウレイ

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抄録

<p>ヘマトイジン結晶は,低酸素分圧下の閉塞した部位で出血が起きた際に形成されるヘモグロビン分解産物であり,近年認知度が増加している。ヘマトイジン結晶の形成には特殊な環境が必要なため,継続して尿沈渣中に出現することは稀である。今回,尿沈渣中にヘマトイジン結晶を継続的に認めた1症例を経験した。症例は70歳代男性。前立腺がんの化学療法中であった。繰り返す肉眼的血尿と尿閉により尿沈渣検査が施行され,様々な形態を呈したヘマトイジン結晶が継続的に認められた。尿閉で膀胱内が閉塞腔内となり,膀胱腫瘍からの出血が繰り返されたため,ヘマトイジン結晶が継続的に認められたと推定した。また,症状改善のために清潔間歇的自己導尿(clean intermittent self-catheterization; CIC)が導入され,その後の尿沈渣中にヘマトイジン結晶は認められなかった。CIC導入後,尿閉が改善され,膀胱内がヘマトイジン結晶を形成する環境ではなくなったと考えられる。そのため,新たなヘマトイジン結晶は形成されず,消失した可能性が高い。ヘマトイジン結晶は陳旧性の出血を反映する点で臨床的意義があると言われている。本症例の経過から,膀胱内で出血が持続している場合,ヘマトイジン結晶の有無はCICが正しく実施されているかを客観的に評価する上で有用な指標になり得る可能性があり,今後更なる症例の蓄積が必要である。</p>

収録刊行物

  • 医学検査

    医学検査 71 (4), 743-747, 2022-10-25

    一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会

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