Child-Woman Ratioの分母年齢と地域別将来人口推計の精度との関係
-
- 丸山 洋平
- 札幌市立大学
書誌事項
- タイトル別名
-
- Relationship between the Denominator Age of the Child-Woman Ratio and the Accuracy of Regional Population Projections
抄録
<p>市区町村や小地域等を対象とした地域別将来人口推計では,出生力の将来仮定値にChild-Woman Ratio(CWR)を利用することがあり,一般的には0~4歳人口を15~49歳女子人口で除した値が用いられる。しかし,推計精度の向上を目的として異なる分母年齢のCWRを積極的に推計に利用する立場の研究がある。これらは出生年齢の偏りや都道府県レベルでのTFRとCWRとの相関関係を分母年齢選択の根拠としているが,十分な実証分析がなく仮説の域を出ていない。本研究では過去の国勢調査人口を基準人口とした市区町村別モデル推計による実証分析を通して既往研究仮説の有効性を検証し,その結果を踏まえて将来人口推計の推計精度とCWRの分母年齢選択との関係を捉えるための理論的な分析枠組みの構築を試みる。そしてその枠組みを用いて考えることで,今後の将来人口推計におけるCWRの分母年齢選択について,その限界も含めて提言することを目的とする。</p><p>モデル推計からCWRの分母年齢による0~4歳人口の推計誤差の違いを分析すると,1980年基準推計では既往研究仮説が有効であるが,1990年・2000年基準推計では仮説が成立しないことが示される。この結果に加え,CWRが年齢構造の影響を受ける指標である点に着目すると,モデル推計の期間中に2つの大きなベビーブームコーホートが再生産年齢内を加齢したことによって分母年齢女子人口の年齢構造が変化し,推計精度の高い分母年齢のCWRが変化したと考えられるという仮説が導出される。そこでCWRの分母年齢選択による推計精度の違いについて,年齢構造変化の影響を把握できるものとして0~4歳人口の推計誤差を年齢別CWR(ASCWR)の変化の寄与,年齢構造比の変化の寄与,CWRの分母女子年齢人口の推計誤差の寄与に要因分解する数式を構築した。これが本研究の提示する将来人口推計の推計精度とCWRの分母年齢選択との関係を捉える理論的分析枠組みである。これを用いても推計時に推計精度の高くなるCWRの分母年齢は特定できないという結論となるが,第2次ベビーブーム以降は比較的緩やかに出生数が減少しており,将来の出生力仮定に大きな変動がなければ今後は突出した規模のコーホートがなくなることから,将来の年齢構造変化の影響は小さくなり,CWRの分母年齢選択による推計誤差の差異が縮小すると考えられる知見もこの分析枠組みを通して得られた。このことは分母年齢選択の意義が弱まっていくということであり,今後の将来人口推計では最も一般的な定義である15~49歳を分母年齢とするCWRの選択を支持するに至った。</p>
収録刊行物
-
- 人口学研究
-
人口学研究 58 (0), 29-50, 2022
日本人口学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390575661576356608
-
- ISSN
- 24242489
- 03868311
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- KAKEN
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可