単一施設でリハビリテーション介入したCOVID-19 患者のケースシリーズ ~感染期間における早期リハビリテーションの重要性~

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抄録

<p>【はじめに,目的】</p><p>新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)が世界的大流行となり,当院においてもCOVID-19 患者の入院を受け入れ治療や感染管理を行っている.それに伴い隔離病室での活動制限や安静により,日常生活動作(以下,ADL)が低下することは容易に推測され,理学療法士も医師・看護師と協働し早期にリハビリテーションを提供する必要性は高い.今回,当院におけるCOVID-19 患者の感染期間におけるリハビリテーションとその実施基準,経験した症例の年齢・ADL の特徴を分析し報告する.</p><p>【方法】</p><p>当院にて2020年4~2021月9月に入院加療したCOVID-19患者のうち,主治医からリハビリテーション指示があった患者に対し理学療法を実施した.実施基準は,本邦におけるCOVID-19 診療の手引きにおける重症度分類,呼吸器症状や酸素需要,感染リスク,合併症,年齢,ADL 自立度などを考慮し,感染症科医師および感染対策チーム(以下,ICT)の判断のもと行った.実施する理学療法士は,呼吸器疾患の理学療法経験が2 年以上ある者とし,事前にICT による個人防護具(以下PPE)着脱のトレーニングを行った.リハビリテーションプログラムは,呼吸理学療法,下肢筋力トレーニング,運動指導,腹臥位療法など,重症度に応じて実施した.なお,飛沫およびエアロゾル感染リスクの高い強制呼気・排痰や直接嚥下訓練に関しては,感染症科医師による指示の下,その適応可否や開始時期を判断した.</p><p>早期リハビリテーションの指標として,入院から2 日以内にリハビリテーション開始した患者数からリハビリテーションを実施した全患者数を除した割合(以下,早期リハビリテーション開始率)を算出した.ADL 評価として,隔離病室入室時・退室時のBarthel Index(以下,BI)を測定した.そして,国内における感染者数のピーク期を参考に,2波(2020年7~9月),3 波(2020 年11 月~2021 年3 月),4 波(2021 年5 ~6 月),5 波(2021年7 ~9 月)において,65 歳以上と65 歳未満それぞれの特徴分析を行った.</p><p>【結果】</p><p>当院にて入院加療した137 名のうち,リハビリテーションを実施した患者は76 名(平均年齢66.5 ± 19.8 歳)であった.各ピーク期において2 波8名,3波19名,4波17名,5波32名のうち,65歳以上は2波7名,3 波18 名,4 波10 名,5 波10 名となった.早期リハビリテーション開始率は2 波25.0%,3 波57.9%,4 波64.7%,5 波87.5% となった.隔離病室退室時においてADL 介助レベル(BI ≦60)であった患者は,65 歳以上19/45 名,65 歳未満0/31 名であった.</p><p>【考察】</p><p>我々はADL 低下をきたしやすい高齢COVID-19 患者の診療においてリハビリテーションの関りが重要であることを先行して報告した(Yaita K,et al. JHGM;2021:3-3).Stefano らの報告では退院したCOVID-19 患者(n=115 名,平均年齢74.3 歳)の47.5%が,ADL は低スコア(BI60 以下)であった.当院においても高齢COVID-19 患者の44.2%(19/45 名)が隔離病室退室時にADL 介助レベルであり,感染期間に早期にリハビリテーション開始を検討する必要があると考える.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>ヘルシンキ宣言に基づき,実施において患者に説明のうえ同意を得ている.なお,当院倫理審査委員会の承認(承認番号CH-2020-11)を得て実施した.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390575727757597184
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2022.0_123
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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