脳卒中片麻痺患者の軽度内反尖足に対するTurboMed 装着の即時効果

DOI
  • 村上 美貴
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 久保田 勝徳
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部 桜十字先端リハビリテーションセンター 研究員
  • 吉田 大地
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部 桜十字先端リハビリテーションセンター 研究員
  • 川﨑 恭太郎
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 脇坂 成重
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部 桜十字先端リハビリテーションセンター 研究員
  • 日高 健二
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部
  • 遠藤 正英
    医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部 桜十字先端リハビリテーションセンター 研究員

抄録

<p>【はじめに】</p><p>尖足や下垂足に対し使用頻度が高い靴べら型短下肢装具(shoe horn brace:以下SHB)は,装具装着側の靴を大きくする必要があり,履ける靴の種類が限られることなどの問題点がある.近年,下垂足を対象とした外部装着式の装具としてTurboMed(以下TM,パシフィックサプライ社製)がある.このTM は,登山などよりアクティブに活動する方のためにデザインされたものであり構造上,背屈角度が大きく設定されていることで容易に背屈が補助される.しかし,脳卒中患者を対象としたTM の効果検証は成されておらず,TM が脳卒中後の尖足や下垂足に対しても効果を発揮するのであれば装具の選択肢が広がると考える.そこで,軽度の内反尖足を呈した脳卒中患者1 例に対しTM の使用が歩容及び歩行時の筋活動に与える影響について調査した.</p><p>【症例紹介】</p><p>右前頭葉皮質下梗塞により左片麻痺を呈した60 代の男性である.評価は下肢Brunnstrom Recovery Stage Ⅳ,麻痺側下肢の表在・深部感覚は軽度鈍麻,Modified Ashworth Scale は下腿三頭筋1+,BBS は45 点,基本動作は自立,裸足歩行は監視レベルで麻痺側立脚後期から遊脚後期にかけて軽度の内反尖足を認め,麻痺側股関節屈曲を利用した努力性の振り出しにてtoe clearance の低下を代償していた.それにより,立脚初期で内反尖足での接地となり麻痺側立脚期の短縮を認めていた.</p><p>【方法】</p><p>発症55病日にTM装着,SHB装着,装具なしの3条件での歩行を比較した.測定項目は10m 快適歩行速度,歩行の動揺性および前脛骨筋の筋活動とした.動揺性の測定には,3 軸加速度計(住友電気工業社製)を用い,連続する3 歩行周期の左右・上下・前後方向のRoot Mean Square(RMS)を算出し,歩行速度(m/sec)で除して補正した.筋活動の測定には,TS-MYO(トランクソリューション社製)の表面電極を両側の前脛骨筋に貼付し,正常化した連続3 歩行周期の踵接地時におけるPeak 値を算出した.また,各測定は十分な休憩を取りながら3 条件を各2 回ずつ測定し平均値を比較した.さらに,測定後に使用感を問診にて調査した.</p><p>【結果】</p><p>各測定の結果(TM 装着,SHB 装着,装具なし),10 m快適歩行速度は1.12 m/s,0.97 m/s,1.05 m/s であった.RMS の左右は1.21,1.31,1.60,上下は1.74,1.80,1.85,前後は1.98,1.98,1.80 であった.筋活動は麻痺側で0.17mA,0.10mA,0.12mA,非麻痺側で0.22 mA,0.37 mA,0.57mA であった.また,症例からはTM は足が軽く出て歩き易かったとの感想が聞かれた.</p><p>【考察】</p><p>TM 装着は装具なしと比較し歩行速度に大差は認めなかったが,RMS の左右と麻痺側前脛骨筋の踵接地時における筋活動は増大していた.その理由として,TM 装着では装具の背屈角度が設定されているため麻痺側立脚後期の股関節伸展が容易になり遊脚期におけるtoe off の補助とtoe clearance が確保されたことで,その後の踵接地が促され麻痺側前脛骨筋の筋活動が増大したと考えられる.それにより,ロッカー機能が形成され麻痺側下肢へ荷重が乗り易くなったことで非麻痺側への重心偏位が軽減し左右非対称性が是正されたと考えられる.以上から,TM は軽度の内反尖足を呈する脳卒中患者に対しても効果を発揮する可能性が示唆された.今回は一症例の報告であったため,今後は症例数を増やし検証をしていく.</p><p>【倫理的配慮、説明と同意】</p><p>対象者には本研究の内容を説明し同意を得た.また,当院の倫理審査委員会の承認(2021012502)を得た.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390575727757660544
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2022.0_33
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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