通所介護事業所の職員が抱える悩みのアンケート調査 ~地域と行政と理学療法士とのつながりを意識した講師派遣活動から見えてきたもの~

DOI
  • 大嶌 裕
    社会医療法人社団至誠会木村病院 リハビリテーション科 NPO 法人FSA 介護予防事業部
  • 久保田 勝徳
    NPO 法人FSA 介護予防事業部 医療法人福岡桜十字 桜十字福岡病院 リハビリテーション部 桜十字先端リハビリテーションセンター 研究員
  • 白川 達也
    NPO 法人FSA 介護予防事業部 医療法人佐田厚生会 佐田病院 リハビリテーション科
  • 尾崎 信行
    NPO 法人FSA 介護予防事業部 社会医療法人財団池友会 香椎丘リハビリテーション病院リハビリテーション科
  • 田代 耕一
    NPO 法人FSA 介護予防事業部 桜十字先端リハビリテーションセンター 研究員

抄録

<p>【はじめに】</p><p>通所介護事業所における理学療法士(PT)の常勤人数は全国平均で0.2人と少ない.我々はこれまで,介護予防に関する活動として地域住民等を対象に体力測定会や健康教室を定期的に開催してきたが,PT ができることについての認知度は低い印象である.その一方で,令和2 年に福岡県大野城市との共働事業として通所介護事業所に対する講師派遣事業を企画する機会を得たことから,通所介護事業所に勤める職員に対して介護予防に関する知識の普及・啓発を行うことができれば,PT の職域拡大に繋がると考える.そこで今回,通所介護事業所の職員が抱える悩みについてアンケート調査(実態調査)を実施し,さらに講師派遣活動に対する満足度についても調査した.</p><p>【方法】</p><p>対象は福岡県大野城市の通所介護事業所26 施設とし,対象施設の選定は大野城市すこやか長寿課の職員が行った.実態調査の方法は,アンケート用紙(A4 用紙1 枚)を対象施設にFAX し,記入後にFAX してもらう方法で実施した.アンケート内容は「質問①:リハビリ・運動・レクレーションを行う際に困っていることがあるか」,「質問②:運動指導や介助方法に難渋,又は介助による痛み等で困ったことはあるか」,「質問③:リハビリ専門職の訪問による助言などを希望されるか」の3 つとし,それぞれ自由記載も設けた.さらに,講師派遣の希望があった施設に対しては,助言を受けたい内容を予め電話で聴取したのちに,講師を派遣した(講義60 分,実技60分).その後,講師派遣についての満足度をアンケートにて調査した.</p><p>【結果】</p><p>13 施設より回答が得られ(回収率:50%),その内の9 施設はPT が勤務していなかった.質問①の結果は,6 施設で「適切な運動強度・頻度・量」や「運動効果の数値化」等について困っていた.質問②の結果は,5 施設で「利用者・家族・ケアマネが求める運動指導のニーズが高いこと」や「職員の平均年齢が高いこと」,「腰痛や腕の痛み」,「介護負担」等について困っていた.質問③の結果は,「希望する」が2 施設,「内容次第で希望したい」が5 施設,「どちらでもない」が2 施設,「希望しない」が4 施設であった.また,「希望・内容次第で希望したい」と回答した施設の内6 施設にPT は勤務していなかった.次に講師派遣事業の内容は,パーキンソン病の基礎知識と介助方法について実施し,その後のアンケートは対象職員10 名より回答が得られ(回収率:83%),「非常に満足」が6 件,「満足」が4 件であった.また,「実技の時間を多くしてほしい」や「運動機器の効果的な使い方」等の要望があった.</p><p>【考察】</p><p>本研究の結果,通所介護事業所の職員は自身への腰痛についてや,利用者への運動方法および評価方法について悩みがあることがわかった.その背景には,回答があった対象施設のほとんどにPT が勤務していなかったことが影響したと考えられるが,通所介護事業所の職員は我々PT が最も得意とする内容で困っていたことから,今後の行政との共働事業の発展に寄与する回答であったと思われる.次に,講師派遣活動についてはコロナ禍の活動制限によって1 施設1 回のみの実施であったが,満足度の高い結果が得られた.しかし,講師派遣後の実際の現場で職員の悩みが解消されたかは不明であることから,今後は多施設にて講師派遣活動を複数回実施しつつ,通所介護事業所職員における介護予防の知識に関する理解度などについて調査していく.</p><p>【倫理的配慮,説明と同意】</p><p>質問紙には活動の目的と内容,プライバシーポリシーを明記した.質問紙の回収をもって調査協力への同意を得たものとする.</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390575727757668096
  • DOI
    10.32298/kyushupt.2022.0_38
  • ISSN
    24343889
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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