砂時計における粉粒体の流れ方 : アーチ構造形成の影響

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抄録

本研究は、砂時計において粉粒体の流れ方(流速、内部の運動、圧力、流れきる時間等)についての全貌を明らかにし、砂時計の全体の動き方についての関係式を求めるという大きい問いを前提として行ったものである。小さい問いとして、側壁にかかる圧力と構造・流れ方の関係はどうなっているかというものを設定し、これについて研究を行うことで砂時計におけるアーチ構造についての性質を明らかにすることを目的とする。また、砂時計のモデルは満員電車などから人が出てくる際のシミュレートなどに使われている。そのため、本研究では高速道路の合流部分で、円滑に合流ができるような本線と合流する側の角度を求めている。粉粒体の動きは相互作用などの影響で複雑であり、全体的な解明にはまだ至っていないため、中高の物理では題材としない。その中でも砂時計という限定したものに着目することで、簡略化された粉粒体の動きの特性について見ることができる。本研究は主に2つの実験から構成されている。なお、本研究では粉粒体の変形・吸水性、各物質における摩擦について無視するという前提条件のもと研究を行った。1つ目は、数値を計測せずに流れ方や粉粒体の挙動を見て特徴を分析する実験である。立体ホッパー(砂時計を大きくしたもの)と平面ホッパー(砂粒1つ分の幅のホッパー)の両方を観察することで、三次元的な流れ方と二次元的な流れ方の両方についての特徴を見ることができた。また、目詰まりが起こった際などの特徴的な特色を持つ場合を考えることにより、ホッパーにおけるアーチ構造についての分析も行った。2つ目は、スポンジを平面ホッパーの側面に設置し、粉粒体を流し入れることで、その沈みから砂時計の側壁にかかる圧力の変動を計測するものである。側壁への圧力と流速の関係を求めることで、砂時計のアーチの形成と崩壊の周期について明らかにすることを目 的にしたものである。この実験から砂時計内部でのアーチ構造の有無や、そのアーチの大きさ、崩壊の条件などを知ることができる。ただ、本研究において実験は失敗したため代用実験として、静止時のアーチ構造の側壁への圧力と崩壊のしやすさについての追加実験を行い、主にホッパー内の圧力についての分析を行った。本実験で行ったスポンジによるホッパーの圧力の計測は、スポンジにフックの法則を仮定して、沈み込みからかかっている力を求めたものであり、Google Scholar にて類似の参考文献を探しても見当たらず、独自性の高いものであるといえるだろう。そのため、沈み込みによる構造変化などには注意する必要があるが、参考文献で見られた実験と比べて、より手軽で安価であるといえる。これらの実験と新たな実験を用いて高速道路の合流地点での渋滞を削減するための提案を行った。1つ目の実験からは主に砂時計の挙動について、2つ目の実験からは主に圧力について、円滑な合流の提案のための追加実験からは取り残される粉粒体についての特徴がみられた。また、それらには参考文献にみられないものも含まれていたため、今後の粉粒体研究に役立つものとなっているだろう。

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