超選択的動注化学療法施行後にコレステロール塞栓症を発症した口底癌の1例

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タイトル別名
  • A case of cholesterol embolism after superselective intra-arterial chemotherapy for oral-floor carcinoma

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抄録

コレステロール塞栓症は,大血管壁にある粥腫が破綻し,コレステロール結晶が血中に流出することで末梢に塞栓をきたす疾患であり,カテーテル検査や心臓血管手術などが原因で発症する。今回,われわれは超選択的動注化学療法施行後にコレステロール塞栓症を発症した口底癌の1例を経験したので,その概要を報告する。症例は81歳男性,右側口底癌(T2N1M0,StageⅢ)。臓器機能温存を強く希望したため,放射線治療(66Gy)併用で計4回のSeldinger法による超選択的動注化学療法(CDDP)を施行した。5回目の超選択的動注化学療法を行う前に,右足趾の疼痛,紫紅色斑の出現と急激な腎機能低下(血清Cr値:1.92mg/dl,eGFR値:26.9ml/min)を認め,当院皮膚科で施行した組織生検でコレステロール塞栓症の病理組織学的診断を得た。ステロイドおよびプロスタサイクリン(PGI2)製剤経口投与により右足趾の疼痛は改善を認めたが,腎機能は改善しなかった。ステロイド治療終了後,外来で経過観察を行っていたところ,3か月後に頸部リンパ節の再増大を認め,全身薬物療法を開始したが,10か月後に肺炎により他病死した。Seldinger法では1%程度で脳梗塞が発症すると報告されている。一方,コレステロール塞栓症の発症は非常にまれではあるものの,血液透析に移行する可能性の高い予後不良な疾患である。治療法選択の際には十分に念頭に置くべき疾患の1つと考えられた。

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