乾燥ろ紙を用いた生物学的製剤の母乳移行性評価に資する測定系の確立~多機関共同前方視的観察研究~

DOI

この論文をさがす

抄録

<p>【目的】リウマチ疾患治療において生物学的製剤の開発は、治療選択の多様化および患者の生活の質向上に寄与している。一方で授乳期における薬剤使用については、母乳移行性と児への安全性に関する情報が未だ乏しい。使用が忌避される結果、安全性に関する情報収集も困難となり、さらに使用が控えられる悪循環が存在する。また各施設における研究実施環境にも限界がある。乾燥ろ紙法による検体収集と測定は、検体の採取、保存、測定実施施設への搬送を簡易化させる有用な手段である。本研究では、1)症例集積のための体制確立、および2)検体回収方法として乾燥ろ紙法による生物学的製剤の母乳中濃度定量確立に関する検討を行った。【方法】体制基盤の確立として多施設共同研究体制(13施設)を整えた。本研究体制をとおし、生物学的製剤を授乳期間中に使用した授乳婦より提供された母乳、母乳に標準品をスパイクした品質管理試料(各薬剤6濃度)、段階希釈した検量線試料(各薬剤6濃度)について乾燥ろ紙を作製し、液体母乳と比較した。Whatman 903 filter paperに母乳をスポイトで1滴(約30μL)滴下し、乾燥後、遮光下室温(15~30℃)および冷所(2~8℃)にて1、2、4週間保管した。保管後のろ紙を8mmパンチで打抜き、丸底2.0 mLチューブに入れ、2%ウシ血清アルブミン/0.5% Tween-20含有リン酸緩衝食塩水150μLを添加後、遮光下、4℃/200rpm/16時間で攪拌抽出した。上清を分取後、検量線濃度内に希釈した溶液をELISA法にて測定し、分析バリデーションおよび、液体試料と乾燥ろ紙試料との濃度相関性を確認した。本研究の実施に際し、各施設の倫理委員会の承認を得た。【結果・考察】Tocilizumab 4例、Abatacept 2例、Etanercept 1例、Golimumab 1例、Sarilumab 1例、Ustekinumab 1例、Belimumab 3例より63検体を回収・定量を行った。ろ紙試料の定量下限値は0.16~2.0ng/mL、理論濃度に対する平均真度および分析精度は、すべての7薬剤で、いずれの濃度においても10%未満であった。また提供された液体試料と乾燥ろ紙試料の定量値との真度は10%未満であった。また何れの保存条件においても4週間後の含量は90%以上であった。【結論】生物学的製剤7薬剤について、搬送および保存方法を簡易化した乾燥ろ紙による定量方法を確立した。本研究体制をとおし、効率的な症例集積が可能となり、授乳期における生物学的製剤の薬物療法に寄与することが期待できる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ