ジペプチジルペプチダーゼ-4によるエタネルセプトのバイオトランスフォーメーション

DOI
  • 増井 翔
    京都大学医学部附属病院薬剤部 京都大学大学院薬学研究科
  • 米澤 淳
    京都大学医学部附属病院薬剤部 京都大学大学院薬学研究科
  • 横山 琴子
    株式会社島津製作所
  • 嶋田 崇史
    株式会社島津製作所
  • 大西 輝
    京都大学医学部附属病院リウマチセンター
  • 村上 孝作
    京都大学医学部附属病院免疫膠原病内科 京都大学医学部附属病院がん免疫総合研究センター
  • 村田 浩一
    京都大学医学部附属病院リウマチセンター 京都大学医学部附属病院整形外科
  • 田中 真生
    京都大学医学部附属病院リウマチセンター
  • 中川 俊作
    京都大学医学部附属病院薬剤部
  • 早狩 誠
    京都大学医学部附属病院薬剤部
  • 寺田 智祐
    京都大学医学部附属病院薬剤部
  • 松原 和夫
    京都大学医学部附属病院薬剤部

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抄録

<p>【目的】生物学的製剤における生体内投与後の構造変化(バイオトランスフォーメーション)が注目されている。エタネルセプト(ETN)は可溶性腫瘍壊死因子(TNF)受容体とヒト免疫グロブリンG1のFc部分からなる融合タンパク質製剤であり、N末端にジペプチジルペプチダーゼ-4 (DPP-4)に切断され得るアミノ酸配列を有する。本研究ではETNのN末端バイオトランスフォーメーションとDPP-4の寄与を調べ、構造変化に伴う機能特性への影響を評価した。</p><p>【方法】液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS/MS)を用いた分析法を確立し、ETN投与を受けた関節リウマチ患者またはマウスの血清中のETNのN末端構造を分析した。ヒト組替えDPP-4を用い、in vitroでのN末端切断を検討した。TNF-αおよびβとの結合親和性は酵素結合免疫吸着法により評価した。</p><p>【結果・考察】製剤中では約90%のETNが全長のN末端構造を有した一方、患者およびマウスの血清中ではN末端2アミノ酸切断型が最も多く存在した。ヒト組替えDPP-4はin vitroでETNのN末端を切断した。DPP-4阻害剤シタグリプチンは、in vivoとin vitroの両方でN末端切断を阻害した。一方、N末端切断はETNのTNF-αおよびβへの結合能に影響をあたえなかった。ETNバイオシミラーのN末端構造も、in vivoおよびin vitroで先行品と同様の特性を示した。</p><p>【結論】ETNのN末端はDPP-4によるバイオトランスフォーメーションを受けることが明らかとなった。このN末端欠損は ETNの機能特性には影響しないことが示唆された。生物学的製剤の真の体内動態を理解するために、質量分析系を活用した構造理解に基づく定量分析が重要となる。</p>

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