「診療における薬理遺伝学検査の運用に関する提言」について

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抄録

<p>現在までほとんどの医療施設において、薬理遺伝学検査は書面による説明と同意(インフォームドコンセント)のもとに実施されてきた。薬理遺伝学検査によって判明する生殖細胞系列の遺伝情報は、生涯変化しない、血縁者間で共有されるという点で、他の単一遺伝子疾患の遺伝学的検査と共通の特徴をもつことがその背景にある。がん薬物療法に関係する検査として、UDPグルクロン酸転移酵素(UGT1A1)遺伝子多型検査とNudix hydrolase 15(NUDT15)遺伝子多型検査が保険収載されている。しかし、書面による説明と同意は、意思決定に必要な情報を確実に伝えるためには有用であるが、ほとんどの患者にとって有益かつ不利益がないのであれば、医療現場に不要な負担をかけているだけではないかという指摘もあった。2022年5月日本臨床薬理学会より「診療における薬理遺伝学検査の運用に関する提言」が公開された。この提言によれば、診療目的で実施される薬理遺伝学検査のうち、医療を必要とする遺伝性疾患の確定診断や発症リスクの予測に関連しない項目については、包括同意または口頭同意のもとで運用できる。保険や雇用、結婚、教育など社会生活の様々な場面において患者や血縁者が薬理遺伝学的検査の結果によって不利益や差別を被る可能性が通常の血液検査や一般的な診療行為と同程度であることがその理由である。2022年3月に改定された日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」では、医療安全やチーム医療の重視という観点から、医療従事者で共有できるよう遺伝情報を診療記録に一元管理することの必要性を明確にしている。そのなかで、薬理遺伝学検査には他の遺伝学検査と異なる側面があることから、改定ガイドラインから薬理遺伝学検査の記載は削除されている。今回の日本臨床薬理学会の提言が疾患診断や発症予測に関連しない薬理遺伝学検査とその運用を明確にした意義は大きく、今後の国内における薬理遺伝学検査の普及に寄与すると期待される。</p>

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  • CRID
    1390576037462976000
  • DOI
    10.50993/jsptsuppl.43.0_3-c-s30-1
  • ISSN
    24365580
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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