化学療法に伴う消化器毒性に関連する腸内細菌叢および遺伝子機能予測

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抄録

<p>【背景と目的】化学療法は癌治療において必要不可欠な治療法であるが、しばしば下痢症などの消化器毒性が問題となる。Fluorouracil(5-FU)は小腸粘膜傷害をきたすことが知られており、近年マウス実験モデルにおいて5-FUに伴うdysbiosisが腸粘膜傷害をさらに悪化させることが報告された。しかしながらヒトでの報告はなく、今回我々は化学療法に伴う下痢症と腸内細菌叢の関連を検討した。</p><p>【方法】2018年12月~2020年3月までに当院で大腸癌に対する1st lineの化学療法として5-FUを含む化学療法を施行した症例を対象とした。治療開始前と1サイクル終了後に採便し、次世代シークエンサーを用いて16S rRNA解析を行った。消化器毒性として下痢症を発生した症例を下痢群とし、非下痢群との腸内細菌叢を比較検討した。またPICRUSt解析にて腸内細菌叢の遺伝子機能予測を行った。</p><p>【結果】症例は23例、年齢中央値は62歳、5-FUの経口投与が19例、経静脈投与が4例であった。消化器毒性が発生したのは下痢症4例、他の消化管症状3例(悪心、食欲不振など)であった。化学療法前の菌叢比較では、下痢群で有意にRuminococcus属が少なく、Phascolarctobacterium属が多かった。化学療法後に下痢群ではα多様性(observed OTUs, chao1, ACE)が減少したが、非下痢群では変化を認めなかった。また下痢群では有意にBifidobacterium属が減少したが、非下痢群では、Bifidobacterium属、Fusicatenibacter属、Dorea属が増加した。PICRUSt解析では下痢群においてMembrane Transportが有意に低下し、Oxidative phosphorylationが増加した。</p><p>【結語】腸内細菌叢、特に有機酸産生菌が化学療法に伴う下痢症の発生に関連している可能性が示唆された。</p>

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