プラチナ繭 アゲマ

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タイトル別名
  • Platina Cocoon <i>Argema</i>

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抄録

<p>〔第1 章〕アゲマ・ミトレイ(Argema mittrei)はヤママユガ科に属し,マダガスカルのアンバンジャ,ムカマンガ、アンプシチャ地方に生息する。食樹はルチヤ(Rotra, Syzygium ruineense),ヴァイ(Vahy, Akafia panciflora),アダブ(Adabo, Ficus cocculifolia)などである。アゲマ・ミトレイは2 化性で,産卵から孵化までは1 ~ 2 ヵ月,孵化から蛹化,蛹化から羽化までは,それぞれ約1 ヵ月を要する。近年,現地の森林伐採,外来生物の進入,標本業者などにより,生息数は減少している。インドハッカなど外来種はその要因の1 つとなっている。<br>  昆虫標本業者は繭を採集業者から集め,自宅で羽化させ,お土産物用の成虫標本(繭も入れる)とし販売する。主な輸出先はドイツ,アメリカ,フランス,台湾である。アゲマ・ミトレイの繭糸の利用は,(1)経糸も緯糸もアゲマの糸を使った重厚なストール,(2)経糸は家蚕糸で緯糸がアゲマを入れたオシャレ用ストール,(3)経,緯ともに 家蚕糸で,各所にアゲマを入れた高級スカーフなどに利用されている。</p> <p>〔第2 章〕アゲマ・ミトレイの繭の強い光沢は繭糸内の多孔性構造によるものと考えられる。繭糸は著しく太く,カイコの重数倍以上もあり,繭糸の内部は超多孔性であり,繭糸内空間率は27%にも達する。繭糸の太さは,繭層中の外層部が太く内層部ほど細くなっている。この傾向はカイコとほぼ同様であるが,アゲマでは起伏が目立つ。<br>  繭糸内の小孔は繭糸の縦断切片から細長い小管状の構造であることが判明した。また,横断切片から繭糸の中心部に大形の小孔が,周辺部に小形の小孔が多数分布することが明らかになった。<br>  さらに,著者らのこれまでの繭糸の微細構造の研究結果と今回の観察結果から,多孔性繭糸はヤママユガ科にのみ存在することが確実と考えられる。</p>

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