戦争の批判的家族誌を書く
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- 北村 毅
- 大阪大学
書誌事項
- タイトル別名
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- A Critical Ethnography on Family and War
- An Autoethnography for Familial Vulnerability
- 家族のヴァルネラビリティをめぐるオートエスノグラフィ
説明
<p>オートエスノグラフィは、個人に閉じこめられたヴァルネラブルな記憶を解放し、社会的に共有(分有)可能な物語へと再編・再演するナラティヴ・アプローチとして方法論化されてきた。オートエスノグラフィのパフォーマティヴかつ介入的な立ち位置は、クリティカルという言葉を伴って言明されることが多く、本稿では、批判的家族誌というオートエスノグラフィの新たな形式を提唱し、その可能性を探る。具体的には、祖父の戦争体験をめぐる家族の生活誌の厚い記述を通して、私自身の家族の歴史性(historicity)に対する批判的介入を試みる。祖父が日中戦争の帰還兵である私の家族では、中国における加害の記憶が家族史の争点となってきた。本稿では、祖父と父、父と私の関係に焦点を当て、その記憶を聞かされてきた母の存在を軸に、過去の暴力が家族の中でどのように語られ、再演されてきたのかを、文化的・社会的・歴史的文脈に位置づけながら記述する。家族とは、「私たち」が自己の来歴を物語化し、過去と現在に対してコミットメントするフィールドである。その家族に対して民族誌的にアプローチすることを通して、歴史的存在としての「私たち」を規定する「連累(implication)」の所在を明らかにしたい。</p>
収録刊行物
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- 文化人類学
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文化人類学 87 (2), 285-305, 2022-09-30
日本文化人類学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390576601793398016
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- ISSN
- 24240516
- 13490648
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- journal article
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- データソース種別
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- JaLC
- KAKEN
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可