移植後急性期タクロリムス誘発性腎動脈攣縮を腎エコードプラ―で評価しバシリキシマブのレスキュー投与を経てエベロリムス導入を行った心臓移植の一例

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抄録

<p>症例は30歳代女性。若年性左冠動脈主幹部梗塞による虚血性心筋症を基礎心疾患とした重症心不全に対し植込型補助人工心臓装着下に心臓移植待機。待機後5年目に心臓移植術施行。術後心機能良好で手術当日に抜管。術前腎機能Cr 0.80 mg/dlと問題なく、ステロイド、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチルによる免疫抑制を開始。その後タクロリムス投与量を漸増したが、術後2日目より腎機能の悪化を認め、術後12日目にはCr 1.89 mg/dlまで悪化し、全身浮腫を伴う溢水状態となった。術後1週目の心筋病理では拒絶所見認めず、心機能も良好に維持されていたが、腎エコードップラー検査では腎動脈と腎実質内の血流低下を認めた。タクロリムスによる腎血管攣縮による急性腎障害を強く疑い、タクロリムスを中止し、レスキューセラピーとしてバシリキシマブを投与した。タクロリムス中止後より利尿剤投与なく尿量が得られ、溢水状態も速やかに改善した。タクロリムス中止1週間後の腎エコードップラー検査では、腎動脈・腎実質内の血流は著明に改善しており、Creも0.62 mg/dlに改善した。術後28日目からエベロリムス内服を開始し、移植7週目に拒絶のないことを確認後退院した。今回、心臓移植後急性期のタクロリムスによる腎血管攣縮が強く疑われ、バシリキシマブのレスキュー投与を経てエベロリムスへの切替を行ったことで腎血流の改善とともに腎機能の改善を得られた症例を経験したため報告する。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 57 (Supplement), s335_1-s335_1, 2022

    一般社団法人 日本移植学会

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