Mcl-1及びBcl-2阻害剤の併用による骨髄非破壊的な前治療による造血幹細胞キメリズムの獲得

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抄録

<p>【緒言】骨髄移植による造血幹細胞(HSC)キメリズムの獲得は腎移植後の免疫寛容誘導に必須であるが、放射線全身照射(TBI)による骨髄抑制が問題となっている。我々はBcl-2阻害剤であるベネトクラックス(Vtx)を用いてカニクイザルモデルでTBIを半減してキメリズムを得ることに成功したものの、依然としてTBIが必須である。今回、新たなBcl-2阻害剤であり、かつHSCに特異的に発現しているMcl-1の阻害剤(S63845)を用いてTBIなしで骨髄移植を行い、キメリズム獲得を試みた。</p><p>【方法】Vtx、S63845をカニクイザルに5日間投与し、HSC細胞数とコロニー形成単位(CFU)を比較検討した。また、Vtx, S63845を併用して骨髄移植を行い、キメリズムを評価した。前治療として抗胸腺グロブリン(ATG)を投与し、術後は4回の抗CD154抗体と4週間のシクロスポリン投与を行なった。</p><p>【結果】Vtx、S63845単剤に比べて、この2剤を併用した場合、HSC除去率が高く、CFUも著名に低下した。また、この2剤を用いて骨髄移植を行うと、全例でキメリズムを認めた。そのうち一例に皮膚移植を行い、ドナー由来の皮膚は正着したものの、サードパーティの皮膚グラフトは拒絶され、ドナー特異的免疫学的寛容が得られていることを確認した。</p><p>【結語】Mcl-1及びBcl-2阻害剤の併用によりHSCを効果的に除去することで、非骨髄破壊的にドナー特異的な免疫寛容を誘導できることを示した。</p>

収録刊行物

  • 移植

    移植 57 (Supplement), s349_3-s349_3, 2022

    一般社団法人 日本移植学会

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